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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
27章 クロスステッチの魔女と引きこもってみる日々
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第595話 クロスステッチの魔女、冬支度をする

 秋の間は保存食や薪を作ったり、魔法を作ってゆっくりと過ごすことにした。拾った果物を干してみたり、肉や魚を漬け込んだり。パンや砂糖菓子を作る魔法や、火を灯すための魔法も作っておいた。使わない時は使わないのだけれど、使う時にはこれらは使う。そうそう劣化するものでもなし、練習も兼ねてため込んでいた。


「マスター、三人で枝を拾ってきましたよ」


「ありがとう、ここに置いておいてくれる?」


 木の幹を切って乾かした薪の他に、焚き付けにする小枝も必要になる。それらは、ルイス達が主に集めてくれていた。時折、キノコや木の実も拾ってきてくれる。アワユキは特に、枝以外のものを面白がって拾ってきた。最近は借りた図鑑も増えてきたから、拾ってきたものは全部調べて、食べられるものは食べている。食べられなさそうなものは、魔法に使えるか試してみることにしていた。


「面白そうなキノコ採ってきた!」


「アワユキ、こんな紫色のキノコは絶対に食べちゃいけないやつですわよ」


 キャロルがアワユキに言っているのを見ながら、一応手袋をした手でキノコを持ってみる。おいしそうな匂いはするものの、明らかに危ない紫色に、赤い斑点のついたカサのキノコだった。


「食べたらお腹壊しそうな色してるわね……」


「お腹壊すどころか、死んじゃいそうですよこんなの」


 アワユキはどうやら、このキノコをルイスとキャロルが見かけて通り過ぎていたのに気づいて、「これは面白そう!」と拾ってきてしまったのだそうだ。完全に善意の声だった。


「まずは他の物しまってから、調べてみようかしらね」


 刺繍の手を完全に止めて、枝や拾ってきてもらった石、花なんかを倉庫のそれぞれの場所に入れていく。それらの整理がひと段落つくと、本格的にキノコのことを調べることにした。キノコはうっかりすると本当にお腹を壊したり命に係わるし、魔法に使うにしても問題があることがある。育てるのは簡単らしいけれど、それ用の箱庭を作る必要がある、という話も思い出しながらページをめくることにした。


「紫……むらさき……紫に赤の斑点のキノコ……」


 ぶつぶつと呟きながら探す。名前がまったくわからないから、絵や文章によるキノコの様子を見ることだけが手がかりだった。


「主様ー、見つかりそうー?」


「これは時間かかりそうかも」


 刺繍の続きは、今日はできそうになかった。急いでもいないし、他のことをするのも悪くないから、別にアワユキに怒ってはいないけれど。

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