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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
26章 クロスステッチの魔女と巡礼の旅
587/1022

第587話 クロスステッチの魔女、火の精霊溜まりに辿り着く

 一晩泊まった後、私達は《レーティアの火の精霊溜まり》へ向かうことにした。火の精霊が集まる、火を吹く山への山登り。


「魔女様なら、大丈夫だとは思いますがねえ。お気をつけて」


「行ってくるわね、マギー!」


 私が箒に乗って地面を蹴り、ルイス、キャロル、アワユキと一緒に空へ舞い上がる。レーティアの山は岩や砂が多く、草が少ない。だから歩くには難しく――故郷と同じような山肌だから、多分そうだろう。草が少ないと砂は簡単に崩れるから――なるべく、飛んで移動することにした。


「この山、本当に火を吹くんでしょうか? 見た目は、どこも燃えてないんですが……」


「でもでも、火の精霊が近くにいる感じはするよー?」


「昔には火を吹いていたのかもしれないわね」


 そんな会話を聞きながら、私はゆっくりと高度を上げていく。草も少なく、石も白くて魔力のないものが多い。そんな中でも時折、赤く火の魔力が凝った石が時折拾えた。多分、精霊溜まりに行ければもっと沢山あるのだろう。

 しばらく飛んでいると、明らかに暑くなってきた。いつもなら、上の方に飛ぶと涼しくなってくるのに。


「でも、この暑い方が精霊溜まりになるのね」


 涼しくするための《冷却》の魔法や、風を起こす魔法を身につけて、魔力を通した。想定していた通りに涼しくなってきたので、このまま《レーティアの火の精霊溜まり》へ飛んでいく。山の上の方にある、不思議と開けた盆地のような場所へと私は着陸した。


「ここが……《レーティアの火の精霊溜まり》。暑いわねぇ!」


 まず、視界に飛び込んできたのは鮮やかな橙色だった。橙色の炎の水のようなものがこんこんと湧き出でていて、その周囲を火の精霊達が踊っている。焚き火の時のように、火の粉がパチパチと舞っているその粒、ひとつひとつが火の精霊なのだ。


『何これー?』


『柔らかいの?』


『冷たいのがいる!』


 ふよふよと寄ってきた精霊たちが、他の精霊溜まりでもそうしていたように、私達を囲んでわいわいと話し始めた。体感としては、『人間』や『魔女』とも言われないのは初めてだ。どうやら、本当にここには人が来ないらしい。道らしい道は、うっすらとある程度だったし。


『おじじー、おじじー、』


『見てー、何かいるー!』


 来て来て!と精霊が誰かを呼びに飛んでいく。奥から、多分ここの口あり精霊だろう、大きく燃える炎の塊が飛んできた。


『おや、これは珍しい。魔女がよくもまあ、ここまで来たものだね』


 柔らかい声で話しかけられたけれど、熱はかなり感じた。

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