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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
26章 クロスステッチの魔女と巡礼の旅
582/1021

第582話 クロスステッチの魔女、客人と一夜を過ごす

 ハンス達兄妹は、自分たちのパンと食料を持っていた。同じ火で温めて、私もパンに簡単なスープで夕食にする。


「ハンスは冒険者なのよね。グレーテは違うの?」


「私は普通に村で暮らしていたんですけれど、今回の巡礼のために兄さんと一緒に村を出たんです。まだ片手で数えられるくらいしか村の外に出たことがないので、とってもドキドキしています!」


 グレーテの弓は、実家から持ち出したものらしい。村で猟師をしていた父親の使っていた短弓で、二人とも得意なのだそうだ。


「弓かー。見ているだけで、触ったことはなかったのよね。戦うとなると、魔法か《ドール》達かでなんとかしてしまうことが大半だし」


「魔女の戦士となると、古物語やバラッドの中の存在ですものね」


「《茜色のナーナエア》のお話、子供の頃に好きでした!」


「あ、そのお話知らないかも。どんなお話か教えてくれる?」


 グレーテの覚えている《茜色のナーナエア》の物語は、私が故郷で《白のアンナエア》の物語として聞いていたお話に随分と似ていた。もしかしたら、同じような魔女戦士が二人いたのかもしれない。しかし二人は疲れていたようで、そうそうに眠そうな顔になってしまった。


「魔女様、すみません。見張りは……」


「大丈夫よ、強めの《魔物除け》の魔法が掛けてあるから。ルイスも剣は使えるし、安心して寝ちゃって問題ないわよ」


「では、ありがたく」


 そう言ってハンスはグレーテと天幕の中に行き、グレーテは「ありがとうございます、魔女様」とお礼を言って、寝袋に入り横になった。ハンスの方は寝袋に入ったものの、横にはならず、起き上がった姿勢だった。何か声でもかけようかと思ったけれど、ハンスからも寝息が聞こえてきている。普段なら、木にもたれたりしているんだろう。冒険者の寝方だった。


「マスター、マスターもそろそろお休みになった方が良いのでは?」


 ルイスにこっそりと聞かれ、「そうかもね」と思った私も寝支度をする。別に一日徹夜をするくらい問題はないのだけれど、起きてまでしておきたいことは特になかった。本を広げることもできないし。


「私は寝ることにするわ。ルイス、アワユキ、キャロル、もし何かに気付いたらすぐ教えてね」


「わかりました、マスター」


「まーかせて!」


「大丈夫です」


 《ドール》達の頼もしい返事を聞きながら、私は自分用の寝袋にくるまって横になった。客人がいることで緊張とかをしてしまって難しいかと思ったけれど、気づけばあっという間に眠りに落ちていた。

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