表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
4章 クロスステッチの魔女と先を願う話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

58/1037

第58話 クロスステッチの魔女、プレゼントをもらう

 明るく大きな月に導かれるようにして、家に戻ってくる。ルイスに砂糖菓子を用意してから簡単に自分の分の夕飯を作った。シチューは思ったより沢山できてしまって、うん、これは明日以降しばらくずっとシチューだな、と自分に言い聞かせた。お隣さんにお裾分けしてもいいけど、もう夜だし、行くのは明日がいいだろう。明るく照らされていた《魔女の夜市》と違って、個人の家を夜に上手に尋ねる自信はなかった。……昔、迷子になってお師匠様の家に戻れず騒ぎにしてしまった、苦い記憶も蘇る。あの時は気が付いたらあっという間に日が暮れていて、森の木々に隠れてお師匠様の家の明かりが見つけられず、《引き寄せ》の魔法のリボンもなくて大変だった。そうやって遭難した経験のある私にお師匠様が教えてくれたのが、《引き寄せ》の魔法のリボンをつけて飛ぶ方法だったのだ。私の魔力でも扱える範囲で、お師匠様はよく考えてくれたと思う。


「マスター、グレイシア様のお荷物の中身はなんなんでしょうね」


「家に戻ったら開けて、って言ってたものね。実は私も気になってるの」


 空の上で開けて、落としてしまったらいけないからしまっていただけなのだ。家に帰って魔法の明かりをつけた部屋で、私はグレイシアお姉様がくれた包みを開ける。その中には木剣が一本と、《疲労軽減》とは別の図案が入っていた。図案を見てみると、私でも手に入るような素材の指定がある。長細いリボンのようなものを刺す刺繍図案に、《重量調整》という名前がつけられていた。その横には追加で書いたらしい、インクの色が違うメモ書きがあった。


”クロスステッチの魔女へ。ルークが、ルイスが家でも練習できるよう木剣を贈りたいと言うので贈ります。《重量調整》は私がつけていたリボンと同じ重さになるよう図案を調整したものだけれど、せっかくだから自分で刺して作っておあげなさい”


「グレイシアお姉様ったら、粋なことをしてくれるじゃない。それにしても、あんな内緒事みたいにしないで言ってくれたらいいのに」


「沢山もらってしまいましたね、マスター。僕の服ももらってしまいましたし」


「明日、リボンは作ってあげる。動きやすい服は……なんとかしないとね」


「いいえ、僕としてはこの服で剣を使えるようになりたいです」


 くるっと空中でターンをしながらルイスが言う。かわいらしい姿を眺めながら、私は明日の朝一でグレイシアお姉様にもらった図案でリボンを刺繍することに決めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ