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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
26章 クロスステッチの魔女と巡礼の旅
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第579話 クロスステッチの魔女、雨に降られる

 《レーティアの火の精霊溜まり》は、エレンベルクの最南端。有名なレーティア山にあるのは、私にもわかった。


「レーティア山は、時折火を吹くんですって。山のてっぺんから炎が出て、その時に一緒に噴き出される石には、ものすごく強い炎の力が宿っているらしいのよ。お師匠様が昔、おっしゃってたわ」


「火を吹く山、ですか……」


 聞いた時には半信半疑だった。山で暮らしてきたから、恵み深い山もあれば、そうでもない山もあることは知っている。私の故郷は恵みの薄い、土の多い場所だった。遥か昔にはあの山も火を吹いたことがある、という物語は聞いたことがあるが、古き魔女《白のアンナエア》が二度と火を吹かないよう封じた、と言われていた。あの山で暮らしていた頃、火を吹いた光景なんて一度も見たことはない。火の力の強い石も見たことはないから、ちょっと楽しみではあった。あんまり暑いのや、火傷するのは嫌だけれど。


「話に聞くだけでも恐ろしいですわね。そんなところに精霊溜まりはあるとしても、あるじさまが向かうのに怪我をされたら嫌ですわ」


「そうね、《火除け》の魔法を身につけられるようにしておいた方がいいかもしれないわ」


 三等級の魔法の本の中に、そういう魔法があったはずだ。そう思いながら、私は箒で着陸できそうな場所を少し探し始めた。お腹も空いたし、魔法を作るのに色々と広げたい。

 しばらくは森が続いていたが、少し飛ぶと開けた広場に出た。誰かの焚き火の跡もあるから、旅人がここで泊まって出て行ったりしたらしい。そこに箒を下ろし、お昼ご飯のパンを食べた。ルイス達が砂糖菓子をかじっている様子を見ていると、そろそろ彼らに渡していた袋の中身が足りなくなってないか心配になる。


「砂糖菓子の補充もしておかないとだわね。ほら、袋を出して」


 遠慮してか、何度も言ってるのに砂糖菓子の追加が欲しいと自分からはあまり言わない子達なのだ。《砂糖菓子作り》の魔法を広げ、たっぷりの砂糖菓子を作って三人の袋をパンパンにしてやる。箒で移動している間は一緒に乗ってるから必要は薄いとはいえ、うっかり落ちてしまった時に大変なのだ。

 そんな風にゆっくりしていると、気づけば空が翳ってきた。雲の方に移動している自覚はあったが、ついでに雲も風でこちらまで流されてきたらしい。《雨除け》の魔法の天幕を張り合えたあたりから、雨が降ってきた。


「止むまでここにいるわ」


「結構強い雨ですね……」


 あっという間にザァザァと雨が降る中、私は《火避け》魔法を作ることにした。

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