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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
26章 クロスステッチの魔女と巡礼の旅

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第578話 クロスステッチの魔女、次の場所へ向かう

 《クーリールの風の精霊溜まり》を出た後、今度は《レーティアの火の精霊溜まり》を探すための魔法を作った。また鳥ができたので、遠距離の覚悟をする。


「今度もまた、遠くなりそうですね」


「本格的に暑くなる前に、なんとか辿り着くのが目標。頑張るわよー」


 しばらく南へと歩いて風が落ち着いてきたあたりで、箒に乗る。森の中で日が落ちてきたから、そこで適当な木を探し、眠ることにした。


「最後は、火の精霊の場所なんですよね」


「火は浄化も司るモノのひとつだから……悪い病とかが《精霊樹》についてしまわないためには、必要なものなのよね」


 土と水は、樹を育むため。風は、《魔女の箱庭》の空気を澱ませないため。そして火は、病を遠ざけるため。……《精霊樹》がどんな病になるかわからないから、こういうのは用意しておいて損はないのよね。それに、お師匠様から借りた本によると、《精霊樹》の育成には火地風水の力の配分が大切なんですって。どれかが偏ってしまうとうまくいかないから、それをあの石で補うみたい」


 今本を少し開いて確認したかったから、よく乾いた綺麗な布を出してきてそれの上に本を出した。地面の上で下手に広げて、汚してしまったら絶対にものすごく怒られるのが目に見えているから、用心は必要だった。


「南で精霊石に力をもらえたら、家に帰ってゆっくりしたいわね」


「それもいいですねえ」


「道中で、素敵なものが見つかるといいですわね」


 食料品や甘いもの、調味料をついでに買って行くことも検討しながら、羊皮紙の地図を火に透かして見た。いくつかの大きな道があり、点々とある宿場町や公益都市のいくつかに、運が良ければ辿り着けるだろう。買い物自体はある程度済んでいるから、少なくとも行きでは狙って街へ寄るつもりはなかった。


 話してるうちに眠くなったので、結界を張ってから木の上に登って眠りにつく。風が木の葉を揺らすザワザワとした音に、《クーリールの風の精霊溜まり》の精霊達のことをつい思い出したりしていた。けれど、気づいたらそれらの音を子守唄に、私は静かに眠りに落ちていた。


 翌朝、目を覚まして木を降り、朝食を食べる。それから箒に乗って、木の枝の隙間を縫って上へと抜けた。


「んー、今日はいい天気! 気持ちよく晴れて、絶好の箒日和ね!」


「よかったですねえ」


「……まあ、進行方向は雲がかかっていて、これから雨が降りそうな方に突っ込んでいくんだけどね!」


 頭上は綺麗に晴れているのに、箒を進める方向には黒雲がある。嫌な予感を感じながら、私はそちらへ箒を進めた。

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