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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
26章 クロスステッチの魔女と巡礼の旅
577/1022

第577話 クロスステッチの魔女、風の精霊達と話す

 風の精霊達は途中から、完全に精霊石をおもちゃにして遊び始めたようだった。まあ仕方ない、みたいな気分で見守りつつ、その間に私はゆっくり休憩していた。流石にちょっと、疲れていたので。


「お天気もいいわね〜……」


「お洗濯物とか干したら、気分よく乾いてくれそうですよね」


「あー、旅が終わったら全部丸洗いしないと」


 ついつい、そんなことまで思考が及んだ。まだ巡るところは一ヶ所あるし、そこから帰ることも考えると、かなり先のことにはなるだろうけれど。


『魔女ー、石に風を籠める他に、してほしいことはある?』


「特にないわね。あれだけが目的だったの。もしもまた何か欲しいものが出たら、またここまで来るわ。たまには運動もしないと」


 こんなに体を動かすのなんて、今回の旅がとても久しぶりだった。あちこちにはよく行くのだけれど、移動の大半は箒で飛んでいる。だから、『足が棒になる』心地は、本当に久しぶりなのだ。


「ああ、そうだ。強いて言うなら、これから最後の精霊溜まりに行くの。《レーティアの火の精霊溜まり》よ。随分と暑いと聞くから、この刺繍に少し風を分けてくれませんか? そしたら、風通しをよくする魔法が強くなって、少しでも涼しく進めると思うから」


 暑い中に水で冷やすこと自体は有効だけれど、火の精霊の中に水の精霊の力をほんの少し持ち込んでも、足りなくなる予感がしていた。風の精霊の力で風を起こせば、なんとなくまだ涼しくなるような気がしている。


『なるほど、それは賢いことを考えたね』


 と言いながら、草の香りの口あり精霊は風を少し、魔法に吹き込ませておいてくれた。私自身の魔法より、強い風がこの刺繍から出せるようになるはずだ。これからも暑くなるし、いいものにさせてもらったと思う。


「じゃあ、後は石が戻ってくるまでのんびりしていることにするわ」


「マスター、お茶でも淹れましょうか?」


「風がすごいからやめておきましょっか……」


 風にまくられてお湯がめくりあがりでもしたら、大惨事になるのが目に見えている。水筒から水だけ飲んで、ぼーっと空を見ていた。たまには、こんな時間があってもいいと思う。


「戻ってこないねえ、石」


「魔力は感じられてるんだけどねぇ」


「魔力の入れすぎで壊れちゃったりしませんか?」


「んー、多分大丈夫そうだとは思う」


 数時間はそうやって眺めていた後、やっと石が帰ってきた。口あり精霊が幼い精霊にお小言を言いそうな感じだったので、「石が戻ってくれば大丈夫よ」とだけ言って受け取る。

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