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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
26章 クロスステッチの魔女と巡礼の旅

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第570話 クロスステッチの魔女、今日も旅をする

 お師匠様に近況報告をしてから、私は魔法で《探し》、《クーリールの風の精霊溜まり》へ案内させる魔法の鳥を作った。鳥は普段より少し大きくできたから、鳥から竜になりかける頃合い――つまり、結構遠いのだとわかる。


「どこかの街で、食べ物とか買い足していきたいわね」


「街を魔法で探されますか?」


「うーん。地図を見た感じ、途中でどこかしらの街には行き合うと思うから……とりあえず飛んでみて、本当に見つからなさそうだったら魔法で探してみるわ」


 色々と買い足したいものはあるとはいえ、すぐに買わねばいけないほどではない。だから、まずは魔法の導きのままに飛んでいくことにした。

 春から夏へと変わり行く頃合い、少しずつ風にも熱が籠るようになってきた中を飛ぶ。毎日朝になれば、朝食の後に《精霊樹》の入った庭を観察し、湿り気のある土を撫でる。もうひとつの《魔女の箱庭》も手入れをしてから、昼頃にお腹が空いてくるまで飛んだ。


「あ、マスター! あれ、街じゃないですか?」


 そんな旅を続けていたある日。ルイスが指差した方を見てみると、確かに大きめの建物の影がいくつか、小さな森から西に抜けた方に見えていた。


「今日はあそこに泊まろうかしら。ルイス、お手柄よ!」


「やったあ! マスターに褒められました!」


 森を飛んで抜けてみると、どうやら大きめの道に沿うようにして、街があった。石造りの建物が並び、煉瓦の塀が街を囲んでいる。門の前にはいかめしい門番が二人いて、さながら辺境の大都市といった様子だった。彼らは私が空から飛んできたことに面食らった様子を見せ、慌ててこちらに声をかけてくる。


「まっ、魔女様がこの街に来るだなんて! ようこそ、いらっしゃいました!」


「お名前と滞在日数をどうぞ!」


 まるで宿の主人のようなことを聞く人達だ、と思いながら、私はひとまず問いに答えることにした。


「私は、クロスステッチの三等級魔女キーラ。滞在は……最低でも今夜ひと晩、気に入ればもう少しいたいわね。こういう感じ?」


「ええ、はい!」


「我々も仕事です、ご理解いただけて感謝いたします。魔女様の滞在が、どうぞ良きものとなりますように」


 物々しい雰囲気がある割にあっさり門を開けてくれたな、と思っている私に、彼らは声を揃えて「「トルーリィヤの街へ、ようこそお越しくださいました!」」と頭を下げた。

 なるほど、トルーリィヤの街ならしっかり門番を置いているのも頷ける。私が納得しながら門をくぐると、そこには堅牢な街が広がっていた。

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