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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
24章 クロスステッチの魔女のへんてこな冬
549/1022

第549話 クロスステッチの魔女、お師匠様の家に行く

 三等級に上がる儀式を全員が終えて、広場に戻った私達はそれぞれに解散することになった。もう空は白んでいて、東の空には薄桃色の、朝の欠片が見えている。箒に乗って家に帰ろうとした頃合いで、水晶が震えたのに気づいた。


「もしもし、クロスステッチの魔女です」


『三等級になったでしょう、名前をつけなさいな』


「は、はいっ! クロスステッチの三等級魔女キーラです!」


 ついいつもの癖で名乗ってから、笑い混じりのお師匠様に訂正されて名乗り直した。そうだ、私、三等級魔女になったんだった。


『グレイシアも戻ってきてるからね、改めて挨拶したりもしたいだろう。だから、うちにおいで』


「わかりました!」


「よかったですね、マスター」


「お祝い、おいしいものあるかな?」


「きっとありますよ、アワユキ」


 三人を乗せてから箒に跨がり、もう一度ゆっくりと浮かび上がる。時間はかかってしまったけれど、私は無事にお師匠様の家に辿り着くことができた。空を飛んでる分にはぶつかることもあまりないとはいえ、枝にぶつかったりすることはあるのだ。


「お師匠様、グレイシアお姉様ー!」


 無事に着地して、扉の前で声を張り上げる。すると、扉が開けられてイースが出迎えてくれた。その奥からはステューと、お師匠様と、グレイシアお姉様と、お姉様の《ドール》が何人か私の方を見ているのがわかる。


「さ、中にお入り。服を破いては……ないようだね」


「大丈夫ですって!」


 私がそう言いながら家の中に入ると、クリームの乗ったケーキや肉料理が机の上に並んでいるのが見えた。


「主役が来たわね!」


 ほらほら、とグレイシアお姉様に腕を引っ張られて、机の前に立たされた。


「首飾りを見せて頂戴な、ほら、三等級になったから色が変わったのでしょう?」


「ほら、よく見せて」


 私が銅色になった首飾りを見せると、お師匠様とグレイシアお姉様が「「おおー」」と声を上げた。お二人ともとっくに卒業した首飾りを、私は今日手に入れた。私にとっては、確かに進んだ一歩だ。


「ねえ、クロスステッチの魔女。名前を教えてくれるかしら。あたしは、あなたの名前を知らないのよ」


 グレイシアお姉様にそう言われ、私は咳払いをした。お師匠様との水晶通話で聞いていたかとしれないけれど、改めて名乗ることにする。


「私は、リボン刺繍の二等級魔女アルミラの弟子、クロスステッチの三等級魔女。名を、キーラといいます」


「短くて覚えやすい名前ね、いいじゃない」


 グレイシアお姉様は、そう言ってくれた。

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