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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
24章 クロスステッチの魔女のへんてこな冬

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第547話 クロスステッチの魔女、昇格の儀式が始まる

 私が魔女組合の前の広場に辿り着いた時には、もういい感じに日が暮れようとしていた。周囲を軽く見まわしてみると、私が受験をしたときに見かけた魔女が数人、同じように黒い礼服姿で緊張した顔をしていた。あの時に同じように受験をした魔女の全員はいないようで、頭数はあの時より確実に少ない。

 多分、もうすぐ更新儀式の時間だろう。そう思ったのは間違いではなかったようで、箒から降りて服を軽く整えている頃に、黒いローブの魔女が中から出てきた。


「では、三等級魔女への更新を始めます。合格者の皆さんはこちらへ」


 私は他の推定合格者たちと一緒に、大人しく彼女の方へついていった。私達が待機している広場から、ちょっとした森の方へ。四等級に合格した時、儀礼として首飾りを授けられた時の場所に近づいているんだろと思う。魔女組合で手入れをされているから、夜の道でも歩きやすいものだ。時折、ぽつぽつと魔法の灯りが道を照らしている。足元に躓くようなものがあることもなく、心置きなく歩くことができた。

 誰も話をしていない。静かなものだった。しばらく歩いて、周囲に樹しか見えない光景が続いた後、ふっと道が開ける。あの頃と同じだった。

 浮遊するいくつもの魔法の灯りと、正装の魔女達。宝石や魔法やリボン、レースで飾り立てられた美しい樹を囲むように、私達は並べられる。樹の枝には硝子の球も結び付けられていて、それらは魔法の灯りで美しく輝いていた。


「名前を呼ばれた者は、一人ずつ前へ。跪いて首飾りを一度、差し出すように。それから更新をされたら、これから使う自らの名前――これまでの名前に、真名を組み合わせたものを名乗ってもらいますから、これを宣言するように」


 四等級の時は確か、樹にかけられて満月の光を浴びていたあの硝子球を一人ずつ、見習いの首飾りにあてがい、首飾りをくるむ形で儀式が行われたのだった。きっと、今回もそうなのだろう。


「では、一人目。レース編みの二等級魔女セーラの弟子、かぎ針編みの魔女、前へ」


 一人の魔女が前に進み出る。彼女は樹と魔女の前に膝をつき、祈るように手を組んだ。その垂れた頭から首飾りが一度外され、硝子球のひとつが外される。


「汝、これより真名の名乗りを許され、魔女として階梯をひとつ上がるものとする。汝が前にある道は広く拓け、糸の親の手を完全に離れ、汝はひとりの魔女となる。その覚悟はありや?」


「もちろん、ございます」


 硝子球の中に四等級の青い首飾りがしまわれ、球が自ら光る。それは銅色の首飾りへと変わり、彼女の首元に戻った。


「名乗りなさい、これからの名を」


「私は、レース編みの二等級魔女セーラの弟子、かぎ針編みの三等級魔女アイリスです!」


 振り返って私達にそう宣言した、彼女は誇らしげな顔をしていた。

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