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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
24章 クロスステッチの魔女のへんてこな冬
541/1022

第541話 クロスステッチの魔女、年越しの用意をする

「年越しの祭りに必要なのはー、まずはおいしいごちそう!」


 お師匠様の家では、《ドール》達が保存食を使って上手にごちそうを作っていた。干し肉を戻して料理して、干し果物や砂糖菓子で甘いものを作る。私も同じようにしてみようかと思ったけれど、残念ながら料理の手順をしっかりと思い出せなかった。それに戻す時点で時間をかけていたから、今同じことをしたら年越しに間に合わない。


「とりあえず、今あるもので……かつ、まだ冬は続くから使いすぎない範囲で、何か作ることにするわ。野菜と干し肉でシチューを、いつもより具材大目に煮てー。それから作りたてのパンを魔法で用意して、あ、あとケーキも焼かないと!」


 頭の中で手順を思い出す。必要な材料を確認する。卵はないけど、まあなんとかなるだろう。イース達も、卵なしでケーキを作っていた。卵を入れたら贅沢でおいしいものになるのは事実だけれど、外を見てみると雪が降っていた。風も強い。こんな時に箒を飛ばしたら、事故を起こす予感しかなかった。


「卵の入ったケーキは、春に焼くことにするわ。みんな、覚えておいてね」


「「「はーい」」」


 私は三人に覚えておいてもらうことにして、今家にある範囲のもので作れるものを作り始めた。

 《保存》の魔法をかけておいた野菜室から葉物や根菜をいくつか出してきて、大きめに切って鍋に入れる。干しておいた塩漬け肉の塊を今までは小さく切って使っていたが、今回はたっぷりと食べようと思ってこれも大きめに切った。岩塩や買っておいた香辛料で味を調え、しばらく野菜と肉を煮込んで味が染み出るのを待つ。

 その間にケーキを焼くことにした。卵が入っていないから大したものではないし、都で並べられているようなクリームも入っていない。干し果物を入れてパンを焼くのと大差ない気がするけれど、私がケーキと言えばケーキなのだ、多分。そういうことにした。


「いい匂いがしますねえ、マスター」


「年越しって本当はこうするものだったのよ。バタバタしていて、今まではできていなかったけどね。来年は卵もなんとか用意しておいて、卵入りの贅沢ケーキを焼いてやるわ」


「楽しみー! 卵が入ると、おいしいの?」


「おいしいわよぉ」


 煮えたり焼けたりするまでの間、私はお金を貯金している壺から銀貨を取り出して磨き始めた。普段は針や鋏を手入れするための磨き紙を使って、知らないおじさんの顔が彫り込んであるのを潰さない程度にピカピカに磨いていく。楽しい時間だった。

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