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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
24章 クロスステッチの魔女のへんてこな冬
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第538話 クロスステッチの魔女、精霊樹の計画を立てる

 結晶樹、あらため精霊樹のことが書いてあるよ、と言われて渡された本を見てみることにした。私の読めない字があったら、お師匠様に読んでもらいたいというのも本音。


「精霊樹は……結晶樹に似ている。精霊にとって、居心地のいい樹で……そこから精霊が、生まれるという報告も。《もうひとつの森》の、……お師匠様、これなんて字ですか?」


「ん? ああ、これは『固有種』だね。そこにしかない、という意味だよ」


「そんな枝をもらってきちゃって大丈夫なんでしょうか……?」


「精霊がくれたから大丈夫でしょう。ダメだったら、もっと何かしらが起きているよ」


 何かしらって何だろう。ちょっと怖かったけれど、確かに精霊を怒らせてしまって大変なことになった話は枚挙にいとまがなかった。精霊が棲む森の枝を折って、樹にされてしまったなんて話もある――ちょうど、あの森にいた時に思い出していた話だ。


「精霊の魔力をよく含んだ土と、精霊の魔力の多い水。魔女の魔力も少し混ぜて、枝を土に挿し、定期的に水をやることで、精霊樹は育てることができる……らしい。あたしも、育てたことはないけれどね」


 むしろ詳細な観察日記を書いて出すように、なんて言われてしまった。多分、大事な資料になるから、と。


「まずあの森は、行こうと思って行ける場所じゃない。だからあたしも、あんたがこの森を歩き回ることに対して何も言わなかったんだ」


「普通に歩いてたら知らない場所に出て、びっくりしました……」


「そうだろうねえ」


 私はあの時のことを思い返しながら、温かい紅茶を飲む。それができるありがたみを、感じていた。


「主様ー、精霊樹育てて、アワユキの森作ってー」


「頑張ってみるね。森になるまで育て上げようとしたら、何百年かかるかわからないけれど……」


 アワユキに無邪気に言われて、私は少し遠い目をしながら言った。一本の樹を育てるだけで数十年、数百年かかりそうな樹のことだ。それを森にするまで育てていたら、多分、その間に私が二等級魔女になって弟子でも育てていると思う。もしかしたら、一等級魔女への作品作りとかしているのかもしれない。


「まあ、魔女には時間はいくらでもある。励みなさい」


「わかりました、お師匠様」


 ぺこりと頭を下げて、私は枝をどう育てるかを考えていた。アワユキは雪の精霊だから、水は賄えるかもしれないけれど土を生み出すことはできない。土の精霊が多い地に行って、土を分けてもらうべきかな、なんて考えたりもしていた。

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