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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
24章 クロスステッチの魔女のへんてこな冬
536/1021

第536話 クロスステッチの魔女、土に悩む

 結局、悩みに悩んで。私は特殊な魔法のかかっていない、大きな《箱庭》をひとつ買った。素敵な青緑色に塗られていて、蓋にはオパールが嵌め込まれ、それを虹色孔雀の長い尾羽が囲む図案。もちろん箱の脇には、緊急用の小さな扉がついているものだった。

 箱を買ったとはいえ、すぐに植えられるわけではない。買ったばかりの箱には、植物を育てるための土も水もないのだ。用意をするのは当然、買った魔女の役目になる。


「土……どうしようかしら。まさかもう一度、あの森に行って土をとってくるわけにもいかないわよね。行ける気がしないし、下手したら帰れなくなりそうだし」


 結晶樹中の石の美しさは、元々の木が備えていた石と吸い上げた魔力、と言われていたことを思い出していた。となればこだわりたいのだけれど、どうしたものか。それに、この枝が保つかという問題もあった。せっかく分けてもらったからには、これをしっかりと木に育てたい。


「今まであんまり、土は集めて来なかったからなあー……水だけで育つわけなし、何か土台になるものは必要よね」


 あの美しい空間にいた、結晶をウロから溢れさせていた樹のことを思い出す。いつかはきっと、あれほどの樹に育って欲しい。そう思った。


「その枝、簡単には枯れないって聞いた気がするから、だいじょーぶなの!」


「確かにあの森から出しても、魔力が減ったりする感じは見えないわね。一応どうするか決まるまで、《保存》の魔法をかけておきましょうか」


 そう決めて、魔法のリボンを枝の一本ずつに結ぶ。これで安心して、猶予の時間を取ることができた。

 近くで採れる土も、言ってはなんだがこの結晶樹には不釣り合いだろう。私の《庭》の土は植えたものが育ちやすいように性質を変える万能土だけれど、これに対応できる気もしない。お師匠様なら高位の万能土を持ってるか、手に入れる手段を知っているかもしれないけれど。

 それに、水のことも考えないといけなかった。勝手に水をやってくれる素敵な水瓶は庭についてるけれど、中身の水をこだわるのだって魔女の役目なのだから。


「アルミラ様に相談されてはいかがです?」


「うーん、あんまりやりたくないかなぁ……」


「なんでー?」


 アワユキがきょとんと首を傾げるので、頰をかきながは素直に話した。


「どうやってこの枝を手に入れたか、話したらぜーったい怒られるなぁって思って……」


「「怒られてください。心配したんですから!」」


 ルイスとキャロルに同時に言われて、私は渋々水晶を取り出した。こういうところは、体の違う双子らしいと思う。

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