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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
24章 クロスステッチの魔女のへんてこな冬

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第528話 クロスステッチの魔女、冬の採取をする

 次の日は曇り、採取日和だった。天気があんまりいいと雪が溶けたりして状態が変わってしまうので、これくらいがちょうどいい。


「今日は遠出はしないわ。近くの森を歩いて、日が暮れたら帰るから」


「「「はーい」」」


 家からそこまで離れるつもりはないし、野宿に慣れているとはいえこんな近所でやりたくない。ひとまずカバンにいくつかの魔法を詰め込んで、私は出かけることにした。靴底へ紐を巻いた雪用の靴を履いて、のんびりと歩き出す。目当てがあるわけでない時こそ、いいものと巡り会えるというのは私の個人的な信条だった。


「雪の上、ちべたい!」


「アワユキは好きー」


「キャロルは飛ぶのがいいかもしれませんね」


 《ドール》達がはしゃぎながら、雪の上で戯れている。小さな手が私の服を掴んだりもするから、つい頬が緩んでしまった。

 近くの慣れた森でも、冬に入ることを私はあまりしなかった。だから、なんだか知らない場所に踏み込んだような気分になる。雪で白く化粧をした、木々に下草。花の姿はほぼなく、いたとしても白い――色の少ない世界。時折点々と散っているのは、獣の足跡だろうか。キャロルが足元を冷たがっていたから革靴は作りたいけれど、罠を張ってまでは別に構わない。というわけで、その方向に歩いて出くわせたら狩ることにした。


「主様ー、あれ見てきていい?」


「いいわよ。なるべく三人で一緒にいてね」


「「「はあい」」」


 アワユキが何かに気づき、三人でそちらに向かっていったのを見送りながら、私は私の思いつく方向へ歩く。雪はやんでいるが溶けてもなく、足跡を読むのは容易かった。正式に狩人について歩いたわけでもない私でも、方向を追いかけられる。だからそうやって歩き回りながら、途中で草花や木の実、キラキラ光る結晶を採りながら歩いていた。ついでに、乾かせば焚き付けにできそうな枝も数本。時折この森には、魔女の魔力の影響を受けた魔法の木が生える。それらは簡単に見つかるものではなく、普通の木と同じ顔をしているものがほとんどだった。私もあるらしいと聞いているものの、実際を見たことはない。見つかるといいな、なんて考えたりもした。何の木かは聞いてないからわからないけれど、枝の一本でも持ち帰ればいい材料にできるに違いない。


「あらっ……?」


 普段歩き回るのとは、違うあたりに出た気がする。周囲をぐるりと見回すと、変わらぬ冬の森の光景。けれど、少し違和感があった。

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