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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
23章 クロスステッチの魔女の三等級魔女試験
525/1025

第525話 クロスステッチの魔女、試験を終える

「……では、試験はこれにて終了とします。皆さん、《ドール》と合流して帰るように。結果は春までに、手紙を届けます」


 試験の終わりを告げられたのは、月ももう沈もうかという頃合いのことだった。面談を終えた魔女達が詰め込まれていた部屋の空気が、目に見えて緩む。


「マスター、《ドール》達をお連れしました」


「入っていいわ」


 ルイス達を連れて行った試験官の《ドール》が入ってくると、その後ろには皆の《ドール》がついてきていた。それぞれに自らの主を見つけては、お互いにほっとした顔をする光景がいくつも繰り広げられた。


「あっ、マスター! アワユキ、キャロル、マスターいました!」


「ほんとだ! 主様ー」


「あるじさまー」


 飛んだり走ったりしてこちらに来た三人を抱きとめると、私もやっぱり自然と頰が緩んでいた。この子達と暮らすようになってからの時間は、私が魔女になる前より、魔女になってからより、遥かに短いのに。なのにもう、私の生活にこの子達がいないのは嫌だと思うようにまでなってしまったのだ。怖いような、嬉しいような。


「さー、もう疲れたし、とりあえず帰らないとね」


「確かアルミラ様が、お迎えに来ると仰っておられたような」


「試験どうだったのー?」


 沈みいく月を眺めながら、私は心地よい解放感を感じていた。ここ半年ばかり、ずっとこの試験のことを考えていたのだ。それが終わった今、かわいい《ドール》達と楽しく話しながらゆっくりしていたい。


「試験は……まあまあ、かなあ。みんなはどうしてたの?」


「なんか一体ずつ呼ばれて、お話したよー? 主様はどんな人か、とかー、他の子はどんな子か、とか!」


 どうやら《ドール》にも、面談があったらしい。私は驚きつつも、この子達が変なことを言うようなのはないだほう、と思って安心した。懸念点がないわけではないものの、少なくとも私がこの子達に手を上げたとか、そういう事実無根のことを言い出しはしないだろう。


「皆さん色んな魔法の服や装飾品をつけておられて、見てるだけで面白かったです」


「アワユキ、飛んでって言われて飛んだよー」


「それは僕は言われなかったですね」


 同じような質問やお題が出たわけではないらしい。三人のおしゃべりを聞いているのも楽しいと思いながら広場で佇み、お師匠様に連絡をしようかと思っていた時。私の目の前の空間が捻れて見慣れた扉になり、それが開いた。お師匠様の魔法だ。


「試験お疲れ様。受かったわよね?」


「……たぶん?」


「まあいいや、熱い紅茶を淹れてるからお入り」


 そう言って手を差し伸べてくださるから、手を取って私は《扉》を潜った。

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