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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女の再訓練
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第497話 クロスステッチの魔女、修復の手伝いをする

「お師匠様ー、宿題持ってきましたー」


 いつものようにお師匠様の家に飛んで行くと、お師匠様の作業机の上に患者の《ドール》が眠っていた。左足が半壊している少女型が、布の上に横たわっている。


「あっ、仕事中でしたか?」


「預かってるとはいえ、欠片が揃ってるわけでもないからね。今回は新しい足に付け替えて、全体を綺麗にして魔法糸も新しくしてやるだけだよ。見ていく?」


「見ます!」


 《ドール》が壊れてしまった時、お師匠様のような修復師を頼ることもあるが、自分で替えを買ってきたり、元々の体を作った人形師を頼ることもある。人形師がわからなかったり、もういなくなっていたりすると、特に修復師の元へ持ち込まれることが多かった。後は、自分で治す自信がない時とか。

 お師匠様は今回の子の壊れた足を外し、魔法糸が引っ込みすぎないように鉤に掛けておく。手伝いなさい、と言われて、たくさんの左足を詰め込んでいた箱を出してきた。私が見習いとして雑用をしていた頃から、位置が変わっていないのですぐ出せる。

 壊れた足に魔法をかけると、かつての姿がキラキラと光る砂粒のようなもので補われた。けれど、これを実体化しても脆いし、持ち主の魔女の依頼もある。今回は、これと同じ左足をお師匠様と二人がかりで探した。


「ところで、お師匠様」


「なんだい?」


「こうやっていつも探してますけれど、魔法でなんとかしたりできないんですか?」


 説明してなかったかねえ、と言いながらお師匠様は伸びをひとつした。明らかに大きさの違うものを掻き分け、近い大きさの足を机の上に並べる作業が中断される。


「この左足と完全に同一のもの、はこの世にもうない。ないから、こうして直してくれと言われているわけだからね。わかる?」


「はい、わかります」


「だから、普通の《探し》の魔法ではうまく見つからないことの方が多い。条件として同じ形や同じ見栄えのもの、と設定するべく複雑な刺繍をするくらいなら、たいして大きくないこの箱を漁る方が早かったりするんだよ」


 なるほど、と言いながら私は取り出した足を眺め、近そうな大きさだったので同じようなものを集めたところに置く。魔法も万能ではない、と常々言われていたことも思い出した。


「何度も言ってる通り、魔法は――」


「大体はできても、なんでもはできない」


「よろしい」


 叩き込まれた教えを復唱すると、お師匠様は満足そうに頷いて足を探す作業に戻られた。宿題を出すのは、修復作業が全部終わってからでも大丈夫だろう。

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