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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女の再訓練
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第489話 クロスステッチの魔女、新しいことに挑戦する

 クロスステッチ用の、糸と糸の間の隙間を大きめにとった布を使いたい長さまで織りあげるのには半日かかった。織り機から出来上がった布を取り外す前に、一応作りたいものを確認するためにもう一度本を見る。それから、図案を自分で書くために、という走り書きを添えられた紙束のひとつを広げた。前にお師匠様に貰っていたこれに、やっぱり図案を描いてからの方が安心だと思ったからだ。


「マスター、これは……何の紙ですか? 並んだ四角以外、何も書いてないように見えますが……」


「クロスステッチの図案を作るための羊皮紙よ。これに私が刺繍したい魔法の図案ふたつを重ね合わせて、どう作るのかを一応確認してから織るのをやめようかなって……足りなかったら嫌だし」


「主様、お布団みたいなの作るの?」


「そうよお。ひとつの布にふたつの魔法。だから魔力を通す前に、お師匠様に見せないとって言ったの」


「それはそうかもしれませんね。楽しみです」


 魔力を通さなければ、試してみても大丈夫だろう、と。そんな考えの元、私は本を見て決めたふたつの家を守るための魔法—―《結界》と《弾き》を組み合わせた図案を描き始めた。まずは中心点を決めて、《結界》を。そこから、《結界》の模様の隙間を縫うようにして、《弾き》を組み合わせてみた。私が作れる魔法として示された図案たちの中で、このふたつなら組み合わせることができそうだったからだ。


「ルイス、キャロル、アワユキ、この図案見比べてみて……丸が書いてあるのが《結界》、バツが《弾き》。あってると思う?」


 三人にも見てもらい、ぶつぶつと指さして数えてもらって、「大丈夫だと思います」とお墨付きをもらった。なので、改めて図案と布目の数を数え、もう数目分織り足してから布を織り機から取り外す。


「よーし、糸を染めるわよ!」


「もう夜ですよマスター」


「でも今からやりたいの!」


 日は落ちていたので、魔法で明かりをつける。二種類の糸を染めるために、二つの盥を用意した。糸をひとかせずつ入れて、本で調べた染料を用意する。《結界》には、銀鈴蘭の花びらを粉にしたものを。《弾き》には、弾け胡桃の赤い殻を砕いたものを入れて、それぞれ魔法で染めていく。シチューを食べている間に、糸は綺麗に染まっていた。


「綺麗にできましたね」


「そうね。これだけあったら足りるはず」


 そんな風に言いながら、糸を針に通す。もう月も高くなってきている時間だったけれど、まだ魔女らしいことをずっとしていたかった。

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