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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女の再訓練
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第488話 クロスステッチの魔女、楽しい準備をする

 たっぷりと魔法を作ることに溺れて、三日三晩刺繍をしていたらしい後。しっかり食べてしっかり眠ったら、多分半日以上寝ていた。


「……長生きした魔女ほど生活の時間と周期が無茶苦茶になる、と聞いたけど、こういうことね」


 悟った。今までも多少は無茶をしたけれど、ここまで生活が無茶苦茶になったのは初めてだった。一応なんだかんだと言って、なるべくご飯も食べて毎日寝るようにしていたのが一気に崩れている。戻すべきかは……よくわからない。直さないままの方が、魔女らしいのかもしれない。

 そんなことを考えながら、ベッドでごろごろと転がりゆっくりする。家に帰り自分のベッドにいる、という安心感。ここは私の家だ。私の居場所だ。……この家を誰かに襲われる予定はないけれど、備えはあっていいかもしれない。


「よし、家を守れる魔法を作ってみよう」


 盗まれて困るものも、狙われるものもないけれど。何かを作るなら、目標がある方がいいに決まっていた。というわけで、もう少しゴロゴロしてから本を読むことにする。



「おはようございます、マスター……」


 まだ少し眠そうに目を擦って起きてきたルイスの動きで起きたらしい、キャロルやアワユキも小さくあくびをする。窓から覗いてみたお天気は曇りがちで、これからひと雨降りそうな気配を漂わせていた。


「今日も魔法を作るの。やってみたい目標ができたからね! やったことないことをやるから、魔力を通す前にはお師匠様に見せた方がいいかな……覚えててくれる?」


「わかったー、主様が魔力を通そうとしたら『めっ!』ってすればいいー?」


「ええ、お願い」


 アワユキだけでなく、ルイスとキャロルにも頷いてもらった。うん、誰かと一緒に暮らしていると言うことの利点のひとつはきっとこれだ。私が忘れていても、誰かが覚えていて止めてくれるだろう。


「というわけで、まずは布……が、なかったわね。織らないと」


 機織りは嫌いではない。最初に糸を仕掛けるのは大変に面倒だけれど、糸巻きから布を作り上げる過程が好きだ。ひとりでに経糸たていとをかけてくれて、シャトルに緯糸よこいとをたっぷり巻いてくれる織り機なんてあったらいいのに。……ありそうな気がしてきた。今度お師匠様に聞いてみよう。お金を貯めて、細工の一門に依頼したら作ってくれるかもしれない。刺繍だときっと巻き込むし、何より彫り物があるのはカッコいいから。


「糸ー……は、なんとか足りそうね。とりあえず横幅はこれくらいにして」


 こういうのを考えるのが楽しいから、私は魔女なのだ。

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