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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女と赤い呪い
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第478話 クロスステッチの魔女、呪いを解いてもらう準備をする

 呪いを解く準備ができたと、そう言われたのは春になってしばらく経ってからのことだった。


「もう十分、情報が集まったから呪いを解けるわ。眠っている間もレースの目隠しをしておいてくれたから、最初に予定していたよりも早めに解けるようになったわ。あなた、早く魔法を使えるように戻りたいって、ずっと言ってたものね」


「はい! ありがとうございます!」


 《裁きの魔女》様にそう言われて、私は喜びの声を上げた。改めて魔法の勉強をすればするほど、魔法が恋しくてたまらなくなっていた。それまではあまり気にしなかったけれど、なんというか、ないものだからこそ惜しくなっていたのだろう。魔法を取り戻すまでは箒にも乗れないし、砂糖菓子も作れないし、できないことが多い。歩けなくなって初めて足の有難みに気付くような、そんな心地だった。早く魔法を取り戻して、箒で空を飛びたい。世界をちゃんとまともな色彩で見て、刺繍を作って、自分の砂糖菓子を《ドール》達に食べさせてあげたい。


「今日は月の形もいいから、夜になったら解呪の儀式を行います。今夜は長く起きておいてもらうから、そのつもりでいるように」


「わかりました、昼に寝ておきますね」


 そう話して、私はあまり眠くないけれど昼のうちに眠っておくことにした。ルイス達が「よかったですね」と笑ってくれるので、そんな彼らを抱きしめて布団にくるまり、目を閉じる。なるべく眠れるようになりたい、眠りたい、と思っているうちに、段々と眠気が沸き上がってきたような気がした。


「マスター、眠って目が覚めたら、元に戻れるんですね」


「ええ、やっと魔法が使える生活に戻れるわ」


 私はルイスの言葉にこたえてそう呟いているうちに、気づけば眠りに落ちていた。


 目が覚めてみると、部屋は薄暗くなっていた。夜が近づいているらしい――今の私は魔法が使えないから、夕食と一緒に魔法の明かりを持ってきてもらうのが今までだった。この部屋には蠟燭がないし、火事の危険性を考えるとその方がいい。


「クロスステッチの魔女」


「はいっ」


 外から私を呼ぶ声に返事をして、簡単に髪を梳かしてから扉を開ける。《裁きの魔女》様が入ってきたその手には、水を湛えたお盆があった。細かな模様が彫り込まれているのは、私の目にもわかる。それからいくつかの糸巻きや、布や、針が見える。


「解呪の儀式をするから、こちらへ膝をついて」


 小さく手を振ったルイスに手を振り返して、私は儀式に挑むことにした。

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