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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女と赤い呪い
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第476話 クロスステッチの魔女、腕輪をもらう

「私、すごい魔女同士が戦ってるのを見て、綺麗だなって思ったんです。巻き添えで大怪我しそうな状況だったのに、自分の身を守るための魔法なんて頭から吹き飛ぶほどでした」


 私の言葉にグレイシアお姉様は笑って、「魔女らしいわね」と仰った。魔女らしい魔女。美しいものにのみ膝を折り、それ以外に頓着しない者。そこには自分の命も入る認識は、どうやら間違っていなかったらしい。


「とはいえ、自分の身はちゃんと守りなさいね。死んだら、他の美しいものが見られなくなるから」


「はあい、グレイシアお姉様」


 私はそう返事をしながらお茶を飲むと、グレイシアお姉様はひとつの小箱を取り出してきた。


「やっぱり、これを持ってきて正解だったわ。お守りの腕輪よ」


 太いリボンに、リボン刺繍が施された魔法の腕輪だった。私の呪われた目では色がわからないのが惜しいけれど、なんだかゆらゆらと揺れているような気がするのはなんでだろう?


「この腕輪、普段は服装とかに合わせて目立たない色をしているの。でも着用者が悪意を向けられたり怪我をしそうになれば、たちまち本来の役割をこなしてくれるのよ」


 なんだかさらっと、とんでもないことを言われた。魔法には色も重要な要素になるから、ちょっと変えようだなんて簡単にはできないはずなのに。《砂糖菓子作り》や《パン作り》は基礎の基礎だからある程度色を変えても発動するけれど、これはそんな簡単な魔法ではないのは明らかだ。


「呪いが解けたら、教えてあげるわ。《目眩し》系の魔法の応用でね、少し工夫してあげれば魔法の色合いと服の間で折り合いをしっかりつけることができるわよ」


「お願いします!」


 それは興味深い魔法だった。グレイシアお姉様との間に、また約束が増えた。腕輪をお姉様が私の腕に結ぶと、くるりと輪がひとりでにゆっくり回り出した。


「これで、クロスステッチの魔女が持ち主だと腕輪が覚えるわ。しばらく置いておけば、回るのは止まるから」


「わかりました」


 腕輪を眺める。色がわからないのが本当に惜しいけれど、細かな刺繍を施された腕輪だった。ゆっくり回転しているから、模様を眺めることはできる。本を見ればわかるかもしれないけれど、大半はわからなかったから、ただのお守りではないのかもしれない。あるいは、今の私の目に区別がつかないだけで二つ三つの魔法を組み合わせて模様にしているか……その可能性も、それなりにあった。またひとつ、目指す目標が増えた。

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