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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女と赤い呪い
471/1023

第471話 クロスステッチの魔女、姉弟子のことも少し話す

 一人目の話を聞いて、今まで漠然と周りを取り巻いていたものがわかる。その正体がわかるだけでも、安心した。


「グレイシアが約束をしたがるのもね、あんたが……妹分が、またいなくなるのかもしれないと、約束を積み上げるようになった。そういうしがらみがあれば、重石になると思ったようだね」


「重石、ですか」


 重く考えないでね、とお師匠様は私に言った。グレイシアお姉様は、私にいろんな約束をよく交わす。ちゃんと見習いを卒業するとか、どこどこに行くとか。そういうのを、確かに私はなるべく守るようにしていた。それが重石、ということなのだろう。


「お姉様が色々と約束をしてくれるから、やりたいことや将来のちょっとした目標ができるんです。そういうのを、嫌と思ったことはありません」


「今度伝えておくわ。きっと喜ぶから」


 お師匠の顔は、重い荷物を降ろした後のように晴れ晴れとしていた。きっと、私に言えなかった一人目のクロスステッチの魔女アンジェラのことを、私に話せたからだろう。


「……キーラ、あんたはいい魔女になる。自分の速さで、一歩ずつ進むんだよ」


「はい、お師匠様」


 魔法の勉強を見てあげよう、と明るい声を出してお師匠様が言った。私は本を見せてもらいながら、ひとつひとつの魔法や知識について習うことにした。


「お師匠様、十年以内に三等級魔女試験が受けられそうですか?」


「正直思ってたよりもちゃんと勉強しているから、十五年以内にはできるかもね」


 十五年かあ。さらっと五年上乗せされてしまったけれど、見習いから四等級になるまでで二十年かかったのだから、むしろ勉強や魔法がうまくなって短くなったのかもしれない。


「……私、今回の魔法の戦いに巻き込まれて、《裁きの魔女》様と《裁縫鋏》の戦いを見ました」


「正直、かなり上級者同士の戦いね」


「それで、まあ、いろいろできるのはいいなって。まるっきり真似をしたいわけじゃないけれど、私もやっぱり上の魔女になりたいなって、そう思いました」


 私の言葉に、お師匠様は「よろしい」と言って笑顔になった。


「とりあえずまた変なことに巻き込まれないように、お守りは作って渡すからね。《身の護り》や《傷の請負》の上……《傷の贖い》の魔法を目の前で作ってあげるから、糸の運び方だけでも覚えておくように」


 わかりました、と頷いた。私を傷つけてきた相手に対して、傷を反射させるための魔法なのだと話しながら魔法を教えてくれたけれど、色がちゃんと見えないのが惜しかった。

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