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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女と赤い呪い
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第470話 クロスステッチの魔女、もう一人の終わりを知る

 私の前のクロスステッチの魔女は、《裁縫鋏》としては捕縛されたのだと。そう言われて、いくつかの態度が腑に落ちた。《裁きの魔女》様方が私を捕まえた時に、またクロスステッチの魔女が堕ちたのかと言ったこと。もう堕とさないでねという言葉……。


「今、もう一人のクロスステッチの魔女はどうしているんですか?」


「封印されているわ。《氷のベッド》の魔法で、長い封印と罰の眠りについている。あたしは、その様子を見ていたわ」


 魔女を殺すのは難しい。だから、眠らせたり封印することが罰として多いとは、弟子入りした程ない頃に言われていた。《氷のベッド》はそのひとつだ。凍えるほどに冷たくなった魔法の寝台に寝かされて、冷たさを感じながら眠りに落とされるのだと。どんなにもがいても目覚めることはできず、罰として設定された夢を見続ける刑罰。


「その……もう一人のクロスステッチの魔女、アンジェラは、どうして」


「気づいたら堕ちていた、と言われたよ。難しい魔法を使いたくて、より心を揺さぶる美しいものを求めて、血の美しさに気づいた、なんてね。笑っていた……笑いながら、封印されていった」


 だからこんなに心配されたのだろう、と思うと、なんだか私が彼女の代わりのような気も少しした。それから、お師匠様はさらに言葉を続ける。


「それから、弟子を堕としたとしてあたしも罰を受けた。弟子取りを長く禁止されて、その次は魔女組合が指定した娘を取ることになってね。他にも色々とあったけれど、まあ、あんたに関係あるのはここまでかな」


「じゃあ、それで指定された娘が」


「あんただよ、キーラ」


 なんだか久しぶりに、お師匠様から名前を呼ばれた気がした。その目は優しく、私の頰に手を添える。


「今度はどうか、普通に、平穏に魔法を磨いて、善く生きる魔女となっておくれ」


「大丈夫ですよ、お師匠様。あんな気持ち悪い材料を使う魔女になんか、私はなりませんから」


 わざとどこか笑い飛ばすように言えば、「少し不安はあるんだけどねぇ」と言われてしまった。本当なのに、と膨れっ面をすると、イースがそっとクッキーを勧めてくる。


「まったく、《裁きの魔女》様方の恐ろしさを過剰に教えて、危ないものは危ないとなるべく言いつけておいたのに、なんでこんなに色々と問題を起こす子になったんだか!」


「狙って起こしたことは一度もありませんからね!?」


 私がそう言うと、お師匠様はツボに入ったのか大笑いをし始めた。少し涙が滲んでいるように見えたのは、笑いすぎだと思うことにした。

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