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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女と赤い呪い
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第465話 クロスステッチの魔女、砂糖菓子のことを聞く

 《ドール》達には元々、私の砂糖菓子をたっぷりと持たせていた。それはこの子達が一々私に伺いを立てることなく、沢山の砂糖菓子を食べてもらうためのものだったけれど……今は、私の魔法がどうにも使えていないから、重宝している。ルイスにひとつ使っていた砂糖菓子袋を、キャロルやアワユキにも用意しておいて良かった。


「とはいえ、私がこんな状態な以上、いつかは砂糖菓子の方が先になくなってしまうかもしれないのよねぇ……」


 少し不安を覚えて、様子を見にきてくれた《裁きの魔女》様に聞いてみることにした。


「むしろ、聞くのが遅いと思っていたのだけれど……なるほど、こんなものを用意していたのね」


「魔法に没頭なんてしていたりすると、呼ばれても気づかないこともありますし……自分の好きなように齧ってもらって、足りなくなったら私が作る方が、お互いに楽かもなと思いまして」


 私の答えに彼女は、「それなら《裁きの魔女》が確保した《ドール》用に作ってる、透明の砂糖菓子をあげるわ」と言ってくださったので、当面の問題は解消できそうだった。


「透明な砂糖菓子、ですか?」


「作り手の魔力の気配を極力殺してあるから、どんな《ドール》でも魔力の維持に使えるの。大体の魔女は自分で作っちゃうから、わざわざこれを必要とする場面もほとんどないのよね」


 《裁きの魔女》様方の元に拘留された私がルイスと離されたように、魔女が拘留されている間の《ドール》は離されている。核を眠らせていることもあるようだけれど、証言が必要で起こしておかないといけない時などに、この透明な砂糖菓子は重宝されるのだと。別に勿体ぶるほどの秘密ではないから、と彼女は教えてくれた。


「早く呪いが解けて、魔法が使える私に戻りたいです……」


「その目につけてもらってるレース、それが呪いを溜め込んで覚えつつあるわ。だから、もうしばらくの辛抱ね」


 せっかく一冬を素敵な宿で過ごしていたというのに、カリラやマルヤにお別れを言うこともできなかった。さすがに今生きてる人間が死ぬよりは早く外に出られるだろうと思いながら、私は《裁きの魔女》様を見送った後は勉強に戻る。今日も本をめくり、言葉の書き取りや、本の内容をある程度自分なりにまとめると言った作業をしていた。本当は早く刺繍をしたいところだったけれど、今の目では色の区別がつかない。魔法が発動しないだけでなく、事故を起こすだろうという予感は、私にもあった。


「痛っ」


 そんなことを考えていたら、紙で手を切ってしまった。

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