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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女と赤い呪い
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第460話 クロスステッチの魔女、目の色が変わる

 何度か促されて、おそるおそる目を開く。私の視界はいつかのようにレースで覆われているけれど、おそらくは魔法の一種なのだろう。概ね、問題なく見通すことができた。


「何の呪いか、このレースに溜め込ませたら調べることができるの……あら?」


 《裁きの魔女》様は不思議そうな顔をして、私の瞳をちらりと見た。


「クロスステッチの四等級魔女……よね? リボン刺繍の二等級魔女アルミラの弟子の」


「はい」


 そうよねぇ、と言いながら、《裁きの魔女》様は何かの本を見ていた。本そのものに魔法がかけられているのだろう、私の方から見えている部分には汚れた羊皮紙しか見えない。しかし、彼女にはそれが文字として読めているようだった。


「あなたの目の色、変わっちゃっているわ。青色と記録されているのに、紫色になってる」


「えぇー……」


 それは困った。私は、私の青い瞳を結構好きなのに。あの村では冬場になるといつも空は曇っていたから、私の青い瞳は水に映すと気分を上げてくれた。村は黒や茶色の瞳をしている人が大半だったから、異分子のようで――拾いっ子の証のように思ったことも、あるけれど。それなりに思い入れはあるので、新しい色に変わるのは困ってしまう。


「呪いのせいね。呪いが解けたら、元の色に戻れるから安心なさいな。まだ若いのに、《裁縫鋏》に二回も出くわして気の毒にねぇ」


 こちらの《裁きの魔女》様は、ニョルムルで一緒だった方の魔女様と違って私に同情的だった。少し気分がほぐれて、安心する。


「何を呪われてるか確認したいから、簡単な魔法を使って見せて?」


「わかりました」


 仮に暴発しても害のない、《砂糖菓子作り》の魔法を刺繍した布を取り出す。一目見ただけで、あれ、おかしい、と思った。


「色が褪せてる……? やだ、しばらくしまっていたからかしら」


 白い布も、薄桃色に染めていた糸も、記憶にあるよりも灰色がかって色褪せていた。しばらくしまい込んでいたからか、それとも魔力を沢山使ってしまって疲れているからか――でも、魔力がからっきしになるまで魔法の修行をしていた見習いの頃でも、色褪せて見えていたことなんてなかったはず。


「ふむ。こちらからは、問題なく見えるわよ。ちゃんとした刺繍じゃない。魔力をすっかり使ってしまってるところに悪いんだけど、砂糖菓子一粒分だけ」


 そう言われて、恐る恐る魔法を行使する。疲れているから、元々流し込める魔力なんてほんの少ししかない。しかし砂糖菓子が一粒できる程度の魔法を、と魔力を少し入れても、何も起きなかった。

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