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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
4章 クロスステッチの魔女と先を願う話

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第46話 クロスステッチの魔女、囲まれる

 やや茶色がかった灰色の髪に、若草の鮮やかな緑の目の青年だった。大人びた顔に対して門と同じくらいの小さめな容姿と指の球体関節が、彼が《ドール》であることを示している。気怠そうな雰囲気と少し細めた目からは、来客の連続をどう思ってるか完全には読み取れなかった。彼は先客を玄関に通してから、門の方まで歩いてくる。鵞鳥が足元にわらわらとまとわりついてきて、すべて無視して門を少し開けた。


「羽を集めてきた人ですね? どうぞ、お入りください……あんまり開けるとこいつらが抜け出せてしまうんで、お早く」


「おじゃましまーす」


「おじゃまします」


 ルイスと二人で簡単に挨拶をしながら入ると、あっという間に鵞鳥が寄ってきた。羽がふかふかと柔らかそうで、大切に育てられたのがわかる。そして怖いもの知らずなのか何なのか、やけにがあがあと鳴いて何かをねだっているようだった。


「あのー、この子達こんなに人懐っこいんですか?」


「いえ、どっちかというと何か食べ物をくれと集ってる状態ですね。さっきおやつくれる人が来てたから、余計にそう思ってるようです」


「すみません鵞鳥が食べて良さそうなものは持ってません!」


 鵞鳥にそう言ってもやっぱり通じないらしく、足をつつかれ服の裾を齧られた。ルイスがムッとするのがなんとなくわかるけれど、そっと頭を撫でて抑えさせる。ルイスが飛ぶために羽織っているジャケットは、燕尾がある。私の肩から降りて鵞鳥に近づけば、間違いなく齧られるだろうという予感があった。


「ああ、おやつを持って来たのは何度もうちに来てる人ですから大丈夫ですよ。お客さんにそんなの毎回用意させるわけにもいきません。特に今回は、うちのマスターの不手際で依頼を出してるわけですし」


 そう話す彼の後ろについて歩くと、短い小道が終わって煉瓦造りの家の前に来た。時折混ざっている色煉瓦と赤い屋根がかわいらしい。


「先客はいますが、羽を継ぎ足したいのでどうぞお入りください。マスター! マスター、羽を持って来てくださった貴重なお客さまにお茶出してください」


 後半は自分のマスターに向けて言いながら彼が扉を開け、私たちが入ったのを確認してから素早く閉める。こちらからは背を向けていて顔はわからないが、誰かと談笑していた様子の魔女がちらりとこちらを見た。暗い茶色の癖毛に深い藍色の丸目、そしてかわいらしいだろう顔立ちは目の下と濃いクマで少し怖くなっていた。彼女が指を振ると、ティーセットがひとりでに私の分らしいお茶を淹れ始める。小さなカップも飛んできて、ルイスの分の紅茶も淹れてくれていた。


「鳥の羽、どんなの持って来てくれたの?」


 お師匠様よりすごいかもしれない『一等級に最も近い魔女』の言葉に、私は緊張しながら鳥の羽をカバンから出した。あちこちで拾い集めた羽の小さな袋と、キュルトとルイスが集めてくれたサリルネイアのお城の鵞鳥の羽の中くらいの袋。あればあるだけ質を問わないと言われていたものの、やっぱり緊張して依頼人の反応が見れなかった。

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