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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
22章 クロスステッチの魔女と赤い呪い
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第459話 クロスステッチの魔女、呪われる

 《裁きの魔女》様や街は無事だろうか、と頭を動かした時、頭の上から赤いものが垂れて目に入ってきた。反射で目をぎゅっと閉じ、これ以上入り込まないようにする。迂闊だった、とすぐに自分を恥じた。相手は血染めの魔女なんて名乗る女だ、血を先に魔法で拭っておくべきだった。何かされてしまったのではないか、と怖くなる。血を浴びたからか、鼻にはずっと鉄臭い匂いが残っている。


「マスター、《裁きの魔女》様がこちらにいらっしゃいます。少しお怪我はされているようですが、足取りはしっかりしておられますよ。……《ドール》の方は、破損が見られます。でも核は無事なようですから、修復はできるかと」


 聞こえてきた足音に対して、カバンから顔を出していたのであろうルイスが耳打ちをしてくれた。小さな手が二つと前足がひとつ、不安を察知したのか私を掴んでくれている。


「クロスステッチの四等級魔女、無事?」


「大体無事です。痛いところはありませんが、ソーニャの血が目に入ってしまいました」


 やっぱり、まずいことだったのだろう。《裁きの魔女》様は、硬い声で「そのまま目を閉じていて」と言った。


「はひっ」


「こちらの《ドール》も破損したし、あなたの師を呼んで……いえ、こちらが跳んだ方が早いわね」


 そんな台詞が聞こえたかと思うと、誰かに抱えられる感触と共に宙に浮いた。カバンが落ちないようにぎゅっと肩紐を握っていると、体が幾重にも垂れた薄布を潜り抜ける感触がある。《虚ろ繋ぎの扉》は、私をどこに連れて行くのかと不安だった。


「あなたは二回目よね、《裁きの魔女》の本部よ」


 こそっと囁かれた私の耳に、他の魔女の物と思しき足跡が近づいてくる。頭の上で何種類かの言葉が交わされて、私は地面に降ろされた。目を開けないように厳命され、誰かに手を引かれて歩く。私達を守ってくれた《裁きの魔女》様のことどころか何も話さなかったけれど、別の魔女様だろうという直感があった。《ドール》の修復もすると仰っていたし、もしかしたら彼女自身も、どこか怪我をされたのかもしれない。


「四等級でソーニャと出くわして、《裁きの魔女》がいるとはいえ生き延びたのは運がいいわ。魔法を狂わされなかったのもね。ゾッとするほど美しく見えてしまって、あれに焦がれて破門されてしまう魔女が、時々いるから」


 何かの目隠しをされる。


「詳細は調べないとわからないけれど、呪いをかけられているみたいなの。だから呪い封じの目隠しをさせてもらったわ。もう目を開けても大丈夫」


 なんでもないように言われても、中々怖くて目を開けなかった。

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