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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
4章 クロスステッチの魔女と先を願う話

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第45話 クロスステッチの魔女、納品に行く

 次の日。私は朝ご飯の時にルイスに砂糖菓子をあげてから、魔女組合に出かけることにした。糸を納品し、羽を渡して報酬をもらおうとしたところで、組合の魔女に少し困った顔をされてしまう。


「えーっと、その羽の件でちょっと」


「? はい」


 何かあったのだろうか。それとも、一回《裁きの魔女》に捕縛されたから、前科者として納品ができないのだろうか。ちょっとドキッとしてしまう。


「グース糸の一等級魔女ガブリエラが、急ぎなので、組合に届けず直接持ってきてほしいと」


「彼女の家にですか?」


「ええ。急ぎのようでして。同じように納品に向かってる魔女はいますが、とにかくあればあるだけいいから大至急、と」


 さすがは一等級に近いと言われている魔女、引く手あまたで大変なようだ。私は彼女の家に箒を《引き寄せ》るという白いリボンを渡され、糸を納品して報酬をもらった後はまず羽を渡すべく移動することにした。今日はグレイシアお姉様もいないようだったので、後でお姉様のところへ箒を飛ばそうと思ったのである。


「じゃあ、ルイスと早速行ってきますね」


「ええ、よろしくお願いします。その服装なら大丈夫だと思いますし」


 シンプルなデザインの服を見てそう言われた台詞に首を傾げつつ、急ぎだというからとにかく彼女の元に向かうことにした。組合の外にしつらえられている、箒乗り場でルイスを前に座らせてから箒にまたがり、つけたリボンに魔力を通す。浮き上がった箒は空を飛び、まだあまり行ったことのない方角へ飛んでいった。魔女組合へ飛ぶための予備のリボンをカバンに入れておいて、よかったかもしれない。

 知らない小さな町はずれにある、大きな囲いのある家の前で箒は高度を下げていった。ぐわぐわ、とか、があがあ、と言った声がうるさい。


「あの、マスター」


「どうしたの?」


「あの白くてもこもこしたものは、なんですかね?」


「ここがグース糸の一等級魔女ガブリエラ様の家のはずだし、グース……鵞鳥じゃないかしら」


「リズやキュルトが世話してた鵞鳥より、大きい気がします」


 言われてみるとそうだった。地上に降りた頃になると、ぐわぐわがあがあという鳴き声はやかましくなり、鵞鳥たちがわんさかとこちらに寄ってくる。人懐っこいというか好奇心旺盛なのか、と思っていると、先客が鵞鳥に集られているのが見えてしまった。客人は慣れた様子で彼らをあしらいつつ、玄関に向かっている。途中、私達もこれからあの鵞鳥の群れの中を潜り抜けないと家主の元には行けなさそうだ。脱走防止も兼ねてか、胸までの高さがある門の向こうに声をかける。


「ごめんくださーい」


 聞こえてなさそうだったので、もう一回。大き目な声で。


「ごめんくださーい、魔女組合から羽の納品のお仕事を受けてきました、クロスステッチの四等級魔女ですけどー! いらっしゃいますかー!」


 ルイスが突かれないよう、肩の上に乗せて家主を待つこと数分。しばらくして、青年型の《ドール》がやってきた。

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