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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
21章 クロスステッチの魔女と悪い魔女
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第448話 クロスステッチの魔女、再会する

 私とお師匠様の前に、布状に編まれた柔らかい編み物の包みが載せられ、広げられた。包みの中には真っ赤な薔薇の花と蔓、土付きの根っこがある。『眠れる森の薔薇』を取ってくることにお二人は成功したんだ、という喜びと同時に、眠気が来た。耐えられないほどではないけれど、あくびが出る。


「こら、上の魔女の前で大あくびなんてするんじゃないよ」


「気にしないでいいわ。どうもこの薔薇、人間にはあまり害がない代わりに、弱い魔女には効くようなのよね」


「魔力に反応してるのかな、研究しがいがありそう……時間はないけど」


 私以外のお三方は平然としていて、さすがと思わされてしまう。《身の護り》の魔法が震えて少し動いているようだったけれど、完全には眠気を打ち消せていないようだった。


「ぁの、すみません、《身の護り》をつけてるん、ですけど……ふぁあ」


「あれは見える攻撃とか毒には効くんだけど、眠気だとねぇ。魔女でも普通にあることを異常だとは思わないから、《身の護り》の魔法の効き目は薄いのよ」


「《眠気覚まし》の魔法を貸してあげる」


 ガブリエラ様の魔法なのだろう、細い糸が腕に通されたかと思うと、途端に頭がはっきりした。誘惑に負けてしばらく昼寝をした後のように頭が冴えているけれど、寝てない、はず。多分。


「魔女によく効く魔法だし、何より刈り取って来れたなら、ニョルムルで大騒動になる危険はなくなった……んですね?」


「ニョルムルはね。目印になりそうなものはなるべく取り除いておいたとはいえ、《裁縫鋏》の魔女が薔薇を狙ってこっちに来る可能性はあるけれど」


「でも、もうすぐ《裁きの魔女》ちゃん達が来るはずよ」


 こんな効果になったのは土が違うのか、それとも水か、あるいはさらに別の要因か……なんて議論のようなものをしながら、私達がお茶をしていた時。扉が開く音もなく、黒いマントで顔をすっぽりと覆った、二度と会いたくなかった人が空中から《虚ろ繋ぎの扉》で現れた。《裁きの魔女》の一人だ――皆同じ姿をしているから、彼女達のことを判別するのは難しい。


「ターリア様の姫君、二等級魔女ガブリエラ様より知らせを受け参上しました。……またですか、クロスステッチの四等級魔女」


「また巻き込まれました……」


 絶対にマントの下で苦笑いをされている気がする。身元を隠匿するために《裁きの魔女》達の声色は一定にされているから感情はわからないはずなのに、そんな確信が持てた。

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