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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
18章 クロスステッチの魔女と小さくなった《ドール》
387/1022

第387話 クロスステッチの魔女、温泉蒸しパンを食べる

「さあさ、泊まっていっておくれ! 宿がお決まりでないなら、ウチの『星屑亭』はどうだい?」


「温泉蒸しパン、温泉卵、安いよ安いよ! 食べ歩きにどうだい!」


「ニョルムルのお土産だよー、彫り物に染物に置物! 今のうちに買っていくといいよー、人気だよー!」


 賑やかな人の声。ざわめき。物売りに値段交渉をする人がいる。蒸しパンを食べている子供がいる。私の周囲にも沢山の人がいて、私は《ドール》達をカバンから顔を出させる姿勢にさせた。


「アワユキもお外飛びたーい」


「絶対はぐれるわよ。ほら、ルイスとキャロルもおいで。カバンの中からお外を見れるようにしてあげるから」


 キャロルは服の魔法で少し、カバンの中で浮いている姿勢で。ルイスとアワユキは、立ってカバンの隙間からのぞき込むような姿勢になって。私たちは宿屋を探す前に、気づいたらお腹がすいていたので軽く食べようと思った。


「やっぱりここに来たら、前から話に聞いていた温泉蒸しパンよね」


「ようこそ……おや、魔女様! うちの蒸しパンは絶品ですよ!」


 屋台に沢山の蒸しパンを載せた人につぶやきを聞かれ、あっという間に屋台に引き込まれてしまった。ふかふかの蒸気でおいしそうに蒸し上がったパンは、生地に何か混ぜているのか何種類もの色があった。


「ここに来たら蒸しパンって聞いてるんだけど、実はあまり慣れていないのよね、蒸しパンって」


「食べる地域の人と、食べない地域の人がいますからねえ。ニョルムルも元々は蒸しパンの習慣がなかったんですけど、宿に泊まりに来た遠方の客に教えられたと言われてるんですよ」


 蒸しパンを魔法で作るのは難しい。普通のパンなら、魔法で作れる。大きさや白黒や混ぜ物についても、ある程度調整が効く。けれど、蒸しパンや種なしパンのように、「膨らませて焼いて食べるパン」から遠いものは、根本の模様が違うようで《パン作り》では作れない。


「じゃあ、ふたつくださいな」


「味はどうします? 普通の白、ブドウを入れた白黒、黒糖で甘めにしてある黒、酒入り、いろいろありますよ!」


「……まだお昼だから、白ふたつで」


 ワインを多めに入れて膨らませたパンもおいしいらしいから、多分発想は一緒なのだろう。とりあえず、一番普通の味をふたつ買った。ひとつをカバンの中のルイス達に割って分けてやり、ひとつを自分で食べる。


「これ、おいしい!」


「おいしいです、マスター!」


「ふわふわしてます」


 《ドール》達にも好評だったし、私にもとてもおいしく感じる。さっそく、随分と足止めをされてしまった。

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