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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
18章 クロスステッチの魔女と小さくなった《ドール》
381/1022

第381話 クロスステッチの魔女、次の行き先を決める

 キャロルが飛び方をある程度覚えるのを待っている間、私は次の目的地をどこにするか考えていた。ひと冬を家に篭らないで過ごすように言いつけられたのを、結局どこにするか決めなくては。あくまで冬ひとつの間だけのこと、住処を変えるわけではないことも気をつけないといけない。ちょっとの滞在のつもりが長逗留になり、気付けば村の魔女になってしまったのもよくある話だ――当人が納得して絆されていれば問題はないのだけれど、私に落ち着く先を変える予定はないのだから。


「旅人に慣れたようなところがいいわねー……」


 前に買った地図を広げながら、行き先を思案する。ソフィ様のいた村の宿から素材集めでさらに田舎の方へ行ってしまったから、どこにしても近くの街に出るのは時間がかかりそうだった。


「あ、主様次のとこ探してるのー?」


「ええ、そうよ。アワユキはどんなところがいい?」


 空を飛ぶ練習から離れて、こちらに来たアワユキに聞いてみる。行き先を決める時の、指針くらいにはならないかと思ったのだ。正直、そこまで期待はしていなかった。


「これから寒くなるならー、アワユキ、あそこがいい! あったかーいお湯が沢山あって、人間が沢山いたとこ! みんな沢山出たり入ったりしてたよー?」


「……お湯が沢山? もしかして……!」


 思い返せば随分と昔、お風呂に頻繁に入ろうとする私を見てお師匠様が仰ったことがあった。


『今のあんたには遠すぎる場所だけどね。北にいくつも山や国を越えたところに、大きな温泉が掘れるからと言って、街全部が宿屋をやってるようなところがある……と聞いたことあるよ。いつかそういうのを自分で見る、と目標を立てれば、修行にも身が入るだろうね』


 財布を確認する。ひと冬を宿で越すには心許ないけれど、道々で稼げばいい。地図を確認する。ここからでも一日二日で行ける距離ではなかったけれど、少なくとも雪が酷く吹雪いたりするよりは早く着けそうだった。汲んできた水を沸かしたりもせず、たっぷりのお湯に浸かってゆっくりと過ごせる冬!

 一度そう思ってしまったら、もう、行かない選択肢はなかった。キャロルの飛び方も安定してきたのを見て、「行き先が決まったわよ」とルイス達に声をかけた。


「マスター、キャロルは大体大丈夫そうです。どこに行かれるんですか?」


「ここから北西に、温泉街があったことを思い出したの! ちょっと遠いけれど、雪が酷くなる前には流石に着けると思うわ。そしたら、いい冬が過ごせるわよー」


 二人とも温泉はわかってないようだったけれど、多分、私が楽しそうにしているから笑っていた。

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