表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
18章 クロスステッチの魔女と小さくなった《ドール》
374/1023

第374話 クロスステッチの魔女、小さな《ドール》にご飯をあげる

 キャロルが増えた状態で宿に戻って、私はその日は《ドール》達と眠ることにした。一緒に布団に入っているルイスと、枕元に丸くなっているキャロルとアワユキ。朝……というか昼近くになって目を覚ましてみると、かわいいが増えていて大変に眼福だった。


「おはようございます、マスター」


「あるじさま、おはようございます」


「おはよー、主様ー!」


 三者三様の挨拶に、「おはよう」と返して、宿屋に食事を貰いに行く。部屋で食べると言って、シチューとパンの塊を貰ってきた。これを切りながら、《ドール》達にパンを渡す。シチューの深皿を四人で共有して、不思議そうな顔をしているキャロルに「食べ方がわからないの?」と聞くと、頷かれた。


「マスターがパンを切ってくださったから、シチューをつけて食べるんですよ。おいしいですよ」


「お砂糖菓子もあげないとだけど、《ドール》はそれ以外も食べられないわけじゃないわ。心を充実させることは、魔力の高まりと同じなの。それは魔女だけではなくて、《ドール》だってあって損がないわ。だから私は、自分の《ドール》に砂糖菓子以外のものも食べさせているわ」


 キャロルの金髪を撫でながらそう言うと、納得した顔でパンに手を伸ばした。小さな体にはちょっとパンが大きすぎたようで、私は半分に切ってあげる。なんだか少し傷ついたような目を一瞬見せたキャロルに慌てて、「もう半分も食べていいけど、手が小さいからちょっとずつ食べてね。落としちゃったら、せっかくの服が汚れて悲しい思いをしちゃうわ」と補足した。


「わかりました、あるじさま」


 こくりと頷いて、キャロルがシチューを乗せたパンを口に入れた。その目が輝いて、もう一口、もう一口。あっという間にキャロルの口に対しては少し大きめのパンと、その上に乗ったトロトロの具材が消えていった。ここのシチューはおいしくて、たまたま見つけたけれどいい宿だと思う。


「あるじさま、あるじさま! これ、おいしいです!」


「よかったですね、キャロル」


「おいしいよねー!」


 私たちがシチューを気に入っているからか、宿の人たちはちょっと多めに盛ってくれる。その分、私も宿賃に加えてちょっとした魔法をあげていた。この辺りには魔女はソフィ様しか住んでいないから、魔女組合も遠いようなのだ。シチューはおいしいけれど、魔女としての仕事はそんなにたくさんはなさそうだった。自分たちで生きていく力が、このあたりの人たちにはある。


「うーん、この後どうしようかしら」


 お師匠様にキャロルを見せてから考えよう、そう思いながらパンをもう一切れ食べた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ