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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
16章 クロスステッチの魔女と《ドール》の秘密
345/1024

第345話 クロスステッチの魔女、《ドール》の体のために旅を始める

「お師匠様、核が育ってきたと思うのですがどうですか?」


「そうだねぇ、もうちょっとしたら核としてしっかり成立しそうだよ」


 お師匠様はそう言って、私の見せた筒に対して合格点を出してくれたのは夏の終わりだった。気が付いたらあっという間に、随分と長い時間が過ぎてしまっている。アワユキが「おめでとう主様ー!」と、一足早くお祝いしてくれた。


「アワユキ、お祝いにはまだもうちょっと早いわよ」


「そうなのー?」


「まだ、体がないもの」


 核はルイスのものほど大きくなっていないけれど、それなりの大きさになっていた。綺麗な淡い虹色の光を放って、液体の中をふわふわと浮いていた。


「ルイスの体の大きさは、ちょっと駄目だね。大きすぎる。もう少し小型の体が必要だから、あんたが言ってたように手のひら大の小さな体が必要だ」


「人形師のお心当たり、ありますか?」


 うーん、とお師匠様は首をひねった。一人だけ、と呟いたけれど、すぐに「いやどうかな……」と打ち消される。


「どうしたんです?」


「もしかしたらあれかもしれないから……」


 きょとん、とお師匠様の言葉に首を傾げた。


「魔女、やめてるかも」


 あらま、と小さな声が出た。魔女を辞める魔女はたまにいる、らしい。そういえば、私はまだ会ったことなかった。魔女は後から成るものだから、辞めることだってできるのだ。一応。……そもそも魔女になるための試験や試練の中で、永遠に耐えられるかとかはしっかり審査される。魔女をすぐに辞めたくなるような人は、最初から魔女になれないようになっているのだ。


「魔女やめてた場合、また探しますかね……」


「もしかしたら、作った体を手元に置いておいてるかもしれないけどね。あたしはまだ仕事があるし、あんたちょっと行って来てくれる? 手紙を持っていってほしいの」


 わかりました、とお師匠様の言葉に私は頷いた。ちょっと遠いんだけど、と言われて、また旅に出るのはいいことかもしれないと思う。その間核のことは少し心配だけれど、お師匠様が見ていてくれるだろう。


「お師匠様、それじゃあこの核のことは……」


「連れてお行き。彼女がまだ魔女だったら、その場で核を入れてもらって動きがおかしくないかを見てもらった方がいいから」


「ど、どうやって持ち歩くのか怖いんですけど」


「手紙も書くけどそこの用意もしないとね。しばらくかかるから、その間に旅の支度をしておいで。多分隣の国に住んでると思うから」


「わかりました」


 多分、という言葉が少し怖いものの。かくして私は、また旅をすることとなった。

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