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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
16章 クロスステッチの魔女と《ドール》の秘密
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第339話 クロスステッチの魔女、もうひとりの話をする

 ルイスにルイスの中のもうひとりの話をするまでは、時間がかかった。私自身も妙なことに巻き込まれて疲れていて、あれから一度寝てしまった後は大事な話をする気力が戻るまで少し時間がかかったのが理由のひとつ。それからもうひとつの理由は、どう伝えたいかで悩んでいるからだった。お師匠様にそれとなく悩んでいると言ったら、言葉の勉強が足りないのだと課題を増やされたりもした。


「うーん……」


「マスター? どうされたんです?」


「魔女になってからの方が、私、勉強してるなって思って」


 ルイスは少しずつ回復していって、今では少しの間なら剣の素振りをしてもいいと言われているほどだった。何か彼にも思うところがあるのか、前よりも熱心に練習している。

 《ドール》の体は、人間や魔女と同じように疲れるということはない。魔女はある程度疲労を無視できるだけで、完全に飲まず食わず眠らずができるわけではない。優先順位が低くなるから無視できるだけで、適当なところで食べたり飲んだり寝たりしないと、さすがに倒れる。けれど、《ドール》は違うのだ。彼らは魔力の消耗を眠気や空腹感として覚えるだけだから、砂糖菓子さえ提供してやれば休む必要がない、なんてことも言える。まぁ、記憶がほとんどないとはいえ元が人間だからか、完全にそんなことさせたらよくないそうだけれど。一晩中ずっと煮詰めておかないといけない鍋を見てもらったり、たまに徹夜してもらう程度になさい――と言ってたのは確か、疲労しすぎて壊れた《ドール》を直してる時のお師匠様だった。


「マスターは、たくさん頑張ってると思いますよ」


 本当にそう思っている顔のルイスを見ていると、やっぱりあのもうひとりも助けてやりたくなる。だからとにかくぶつかってみよう、と思って、その日の夜にルイスと話すことにした。


「ルイス、大事なお話があるの。あなたが眠っていた間のことなんだけど――」


 結局、そのまま話すことにした。説明は前後したり戻ったりで、賢いルイスでなければ理解の難しいようなことになっていた自信がある。例えばアワユキなら、きっとわからない顔をしていただろう。

 とにかく、説明した。ルイスの中で消えずに残っていた、もうひとりのこと。その心も助けてあげたいこと。そのためには、ルイスが核の一部を株分けしてやる必要があること。――そうすることによって、記憶が一番欠ける可能性があること。

 ルイスは、黙って私の話を聞いていた。ぐちゃぐちゃの説明を聞いて、笑って――口を開いた。

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