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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
15章 クロスステッチの魔女と魔法修行
312/1021

第312話 クロスステッチの魔女、新しい魔法の練習をする

 書く練習を一区切りさせた後は、読む練習と新しい魔法の練習をしてみることにした。三等級試験に出るような魔法の中でも、作ったことがないようなものは沢山ある。


「何の魔法を作ってみようかしら。やっぱり作ったことのない魔法、沢山あるわね……」


 そう呟きながら、パラパラと本のページをめくる。凝った飾り文字で書かれた魔法の名前を、指でなぞって声に出しながら少しずつ解読していった。こういうものに慣れていない私にとっては、『解読』と言うのが本当に相応しい。


「えーっと、これは……《氷を作る》魔法。四等級の《氷結》との違いは……『水を凍らせる』魔法ではなく、『何もないところに氷を作り出す』魔法である、かな。これ便利かも!」


 私が使えるの氷の魔法は、水を事前に用意しなくてはいけなかった。それが、この魔法だと用意の必要がないらしい。四等級から三等級への昇格には、こういった魔法の発展形を使いこなす技量も当然のように求められるようだった。図案を見てみると、確かに私が使える《氷結》の魔法を内包していた。氷が白く冷たい枝を伸ばしながら伸びるように、さらに伸びて一回り大きくなっている。残念ながら、この間作った《氷結》の魔法に糸と模様を付け足すようなやり方では効果がない、と、ばっちり書かれてしまっていた。


「今は冬だけど、今のうちに使えるようになっておけば、夏場はきっと涼しくて楽ができるようになるわ!」


 そう言いながら、私はまず魔力のあまり籠っていない白い布と水色の糸で刺繍を始めた。中心点を決めて、まずはそれを囲う最初の四目を。そして、そこからまずは左上へ糸を伸ばし、斜め線だけを図案通りに刺した。糸が縒れて交差してしまわないように、ひとつ刺しては糸を直しながら。そして斜め線だけの模様が最初の四目を一周する形で完成すると、間違いがないか図案を確認。問題なさそうなので、もうひとつの斜め線を刺してひとつずつ、クロスステッチのバツ印を作り上げていった。

 しばらく無心でバツ印を作り続けていると、バツ印も一周して完成した。糸の始末をする前に、もう一度よく確認。三等級になるための勉強なのだから、刺す場所を間違えたまま魔力を通してしまって、魔法が暴発……なんてことは、もうやめにしてしまいたかった。


「よし、できた……!」


 これで大丈夫のはずだ、と数を数え数え再確認して、解けないよう刺繍の裏側をくぐらせてから糸を始末。そして魔力を少し通すと、何もなかったところに小指の爪ほどの小さな氷が現れた。


「やった! 二人とも、成功して……あら、寝てる」


 無心で針を刺してるうちに、夜中になっていた。

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