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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
14章 クロスステッチの魔女と年越し夜会

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第295話 クロスステッチの魔女、新年を迎える

 私を囲んだ魔女様方となんとかお話をしていると、時間の感覚はわからなくなっていた。普段だったら寝ているような時間を過ぎているのは、少し眠気を感じているから確かだと思う。


「あら、こんなに遅くまで起きているのは初めて?」


「なんだか悪いことをしているみたいで、これはこれで面白いでしょう!」


「ほら、こっちのお酒も飲んでみて飲んでみて! 作る時に魔法をかけてるのよ、これ」


 薦められた杯に入っているのは、透き通った薄黄色のお酒だった。飲んでみると、ぱちぱちと口の中で泡が弾ける。混ぜられた香辛料の香りも爆ぜて、いい匂いがしていた。


「わぁ、お酒がパチパチするだなんて!」


「ここでしか出てこないお酒なの。作り方は秘密なんですって」


「夜会の楽しみよねぇ、目覚ましにもなるし」


 私がルイスにも少し飲ませてやると、顔をしかめて「なんですかこれ……」と困ったように呟いていた。お酒だと説明すると、「これもお酒なんです?」と怪訝そうな顔をされる。


「普段時々あげてるのとは、確かに全然違うものねぇ」


「あったかい葡萄酒は好きです」


「《ドール》に色々とあげてるのね。優しい子じゃない」


 うんうん、と魔女様方が頷く。私は私のやりたいようにしているだけだったけれど、確かに魔女様方が連れている《ドール》達は飲み食いをしていない。


「うちの子は砂糖菓子だけ食べさせてるから、甘い匂いがするのよ」


「育て方は色々だものね。うちの子はお酒が苦手だから、こういうところだと何も口にはしようとしないのよ」


 などとあれこれ話をしていると、誰かが「そろそろ時間よ」と言い出した。


「クロスステッチの魔女ちゃん、杯を持って。もうすぐ新年になるから、ターリア様が出てこられるわ」


 言われて慌てて杯を持ち直すと、魔法のかかった器だったのだろう。底から赤い葡萄酒が湧き出てきて、杯を満たす。


「皆の者、もうすぐ年が明ける。さあ、杯を取るがよい」


 いくつも重ねた薄布の向こうから、ターリア様が姿を現した。いつの間にか、その後ろにガブリエラ様とミルドレッド様が控えている。ターリア様の側の仕掛けからくりをしばらくご覧になられたかと思うと、数を数え始めた。


「五、四、三、二……新年、明けましておめでとう」


「「「明けましておめでとうございます!」」」


 ターリア様が杯を少し上げられたのを真似て唱和すると、他の皆が同じようにした。仕掛けからくりからは美しい音楽が奏でられ始めて、小さな城の形をした中で小さな小さな人形達が踊っている。年が明けたのだ。

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