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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
14章 クロスステッチの魔女と年越し夜会

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第281話 クロスステッチの魔女、くたびれる

 疲れた。ものすごく、疲れた。着替えそのものに手間がかかるわけではない。クロエ様の幻惑の魔法で絵の服を私が身に纏う形になるから、大して重いわけではない。被らされた大きな羽と石の飾りがついた三角帽子は、本物と同じような重さを感じている。けれどこれも、魔法の幻惑によるものだそうだ。見た目はもちろん、触れた手触りも、重さも騙せる。幻屋、と呼ばれるほどの魔女の魔法をこんな使い方するだなんて、仕立て屋らしいとは思った。コルセットを締められた分の、息苦しいような感覚まで再現しないで欲しいけれど!


「しばらくその三角帽子とコルセットで過ごしてみて、どう?」


「そもそも帽子をあまり被らないので、落とさないか気になるし少し重いですね……コルセットは普段つけないから、しんどいです」


「じゃあ髪ばさみをつけて、ぼうしが落ちないようにしておこうね。重さとコルセットはまぁ、慣れかなぁ」


 確かに色とりどりの飾りをつけた三角帽子は素敵なものだけれど、実際に被るとなると思っていたより大変だった。四等級魔女試験に合格した時に被った時も、落とさないかずっとソワソワしていた記憶がある。


「慣れてる慣れてないって、やっぱり人間だった頃の影響もあるのよね。例え魔女になってからの方が長くなったとしても」


「この子はすこぅし、魔女の方が長くなってきたよ……ちょいとくるっと回ってお見せ」


 言われた通りに回ると、スカートの裾がふわりと上品に広がる。普段着ている服ではあまり起こらないこのささやかな現象が、私は嫌いではなかった。ちょっと値段との折り合いが難しいだけだ。


「クロエ、裾をもう少し伸ばせる?」


「これくらい?」


「そうそう、裾はこれが似合うだろうね。さ、もう一回回って見せて」


「マスターがお姫様みたいで素敵です!」


「ずっとお姫様みたいな服でいたらいいのにー!」


 もう一度くるっと回っていると、ルイスとアワユキの声援まで飛んできた。完全におもちゃにされている気がするけれど、コルセットと三角帽子に慣れないといけないのは自分でもわかっているので甘んじて受け入れる。年越しの夜会の間はずっと、というか本来なら身分かお洒落に関心の高い女は、コルセットを締めるはずなのだ。魔女は身分の外側だから、等級に応じた素材であればつけてよい。私はどうにも慣れられなくて、一人暮らしになった時にお師匠様からもらった普段使い用のコルセットを全力で仕舞い込んだけれど。


「お師匠様、結構疲れたんですけど、あの、年越しの夜会ってどれくらい続くんです……?」


「文字通り夜通しだよ」


 思わず変な声が漏れてしまった。

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