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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
13章 クロスステッチの魔女と古い魔女の遺跡
274/1021

第274話 クロスステッチの魔女、お掃除が続く

 必死に服をかき集めている間に、陽が落ちて来た。二人がちゃんと戻って来れるように、あと私の視界を確保するために、灯の魔法のリボンを蝶の形に結んだものに魔力を吹き込む。ひらりひらりと私の周囲を飛んで光る蝶の姿は、お日さまのような白っぽい光のものだ。魔女によっては他の色の光を出すこともできるようだから、今度、作ってみてもいいと思った。


「あぁあ、こんなところまで飛んで行って……」


 必死に回収したかいがあって、なんとか集めきることができた。私もさすがに、自分の持っている服は把握している。お隣との塀にかかっていた肌着を回収して、これで全部だった。幸い隣人が出てくることはなかったけれど、家の中で大笑いされている気もする。


 服を集めたところでいったん家に戻り、服を最低限畳んで衣装箪笥に詰め込む。それから光る蝶を追加で何匹か飛ばして、二人が戻って来れるようにした。近くに気配がないのだが、不安にもなる……いったい、どこまで探しに行ってしまったことやら。かと言って入れ違いは嫌だし、と食べさせてあげるためのお夕飯の支度をしながら待っていたものの、シチューが後は煮るだけ、という状態になってやっと帰ってきた。


「ただいまー!」


「戻りましたー!」


 カバンにも手にも沢山の物を持っている二人の姿に、どれだけ探してくれたのかと頭が下がる思いがする。それらをすべていったん机や床に置いてもらい、「お夕飯をしてからお片付けしましょうか」ということにした。器やスプーンは吹っ飛んでいたのをかき集めて洗っておいたので、そのまま二人にも出す。今日は旅先で獲って保存していた魚と、保存しておいた芋を入れたシチューだ。


「明日は片づけをした後、食料の買い込みと薪の確認と洗濯と……」


 ぶつぶつと明日の予定を呟いていると、アワユキに「冷めちゃうよー?」と言われ、はっとした私はシチューを食べ進めた。ああそうだ、来年は芋か何かを庭先で育ててもいい。そうしたら出来立てのものをすぐ食べられるのだから。二人はきっと、楽しんで手伝ってくれるに違いない。


 食事の後は、片づけが待っていた。何せ、このままだと眠る場所もないのだ。ベッドの上は布団が窓に引っかかっていて、飛んできた小物や何かの瓶が散乱している。割れた破片が混ざっていないかも確認してからでなければ、安心して眠ることはできそうになかった。


「ふわ……」


「マスター、眠そうですね。もうお休みされてはいかがです?」


 魔女は確かに頑丈で、その気になれば徹夜は苦にならない。しかしそれは『その気になれば』であり、要するに、その気にならない時は普通に眠くなってしまうもので。

 片づけなければと思っていたのに、結局私は最低限のベッドの周囲の片づけだけ終えて眠ってしまった。

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