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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
13章 クロスステッチの魔女と古い魔女の遺跡
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第273話 クロスステッチの魔女、お掃除を始める

 風の精霊が帰った後、家中はめちゃくちゃだった。パッと見えるだけでも家具の位置は結構変わってるし、カーテンは窓の外に飛び出している。食器も棚から飛び出していて、もしかしたら服も同じようになってるかもしれないと思うと少し気が滅入った。集めた素材達も、どうなっていることやら。


「……ルイス、アワユキ、お掃除を楽にしようと思ってたのに逆になっちゃった……ごめんね……」


「すごい精霊を呼び出せたなんて、マスターはすごいです!」


「シルフィーの中でも大当たりなのー、すごいのー」


 二人は私の罪悪感など知ってか知らずか、素直に褒めてくれる。確かに、下級精霊の中では力の強い個体に当たったようだった。むしろ風が足りなくて、換気ができないかもしれないなんて思ってたのだ、こちらは。結果はむしろ真逆。慌てて物を壊さない約束をしていなければ、割れ物の片付けもしないといけなくなっているほどの風だった。生来の貧乏性で割れるような白い食器を持ってなかったことに、これほど感謝する日が来るとは!


「お掃除、どこからします?」


「あっ、そうね! お掃除しないと。まずはとにかく窓やドアから吹き飛んでそうな物を家の中に入れるのが先かな……夜の間中外に物を出しっぱなしってのは、さすがにまずいから。元の位置に戻すのは後からできるし」


 私の家は小さな物で、作業部屋や客人を泊めるしっかりした客室はない。前、メルチが駆け込んできた時も寝場所を整えるのに苦心した覚えがあるほどだ。でも、こういう時は小さくて良かったと心の底から思う。


「ルイス、アワユキ、外に出てうちのものっぽい、私の魔力を感じるものがあったら拾ってきてくれる? それからこれも持っていって、少しお掃除して。ああ、壊さない約束だったけどその前に割れてしまったものもあるかもだし、一応ずっと飛んでいてね。怪我するかもしれないから」


前に買っていた《ドール》の大きさの小さな箒とちり取りを渡すと、二人は元気よく窓から飛び出していった。ルイスに空を飛ぶ刺繍のジャケットを着せたのは、やっぱり正解だったと思う。小さな身体でもこういう時、とても楽しそうにしているのだ。


「さて、私も掃除しないと……」


 本当は魔法で少しばかり楽に換気して、それから少し埃を払ったりするくらいのつもりだった。箒にひとりでに掃除させる魔法はまだ使えないからと、楽をしようとしたツケを払わされていることに肩が下がる。


 それから少しして、何が残って何が吹っ飛んでいるかを確認していた私は叫んでしまった。精霊は小さな衣装箪笥の中の淀んだ空気も飛ばしてくれて、その結果――替えの服どころか部屋着、下着まで窓の外に飛ばされていたのだ。慌てて私も外に飛び出して、服をかき集めることになってしまった。

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