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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
13章 クロスステッチの魔女と古い魔女の遺跡
253/1023

第253話 クロスステッチの魔女、隠された魔法を見つける

 遺跡の中、捨てられた町の中央、かつては噴水でもあっただろう場所。乙女の像をなぞると、か、ルイスが小さく声を上げた。


「ルイス、どうしたの?」


「……なんだか少しだけ、魔法みたいな感じがします」


 アイシャと、思わず顔を見合わせた。私たち魔女は当然、魔法の気配を感じ取ることができる。けれど、ルイスが指差す乙女の像には何も感じなかった。アワユキも横で頷いているのに、私にはわからない。


「するの? 魔法の気配」


「うん! かくれんぼしてるのー!」


「んー……? ルイス、魔力通せそう?」


 ルイスが頷いて私を見た。私の中で、好奇心と危機感がいっぺんにせめぎ合う。絶対に、何かよくない気配がある。長年隠れていた魔法がどんなものか、視えないから判断ができない。


「町の中に魔法があるだなんて、長い間の遺跡番の仕事の中でも初耳だよ。気になるから、魔力を通してみてくれ。小指の爪先程度流せば、魔法のパターンが浮かび上がる。それがあれば、どんな魔法かわかるだろう」


「ルイス、やってみて」


 アーティカ様からもお許しが出たので、ルイスに魔力を少しだけ通すように言う。いつでもルイスを魔法から引き剥がせるように抱えた姿勢で像に近づけると、小さな球体関節のついた指が表面に触れて……触れた場所から像いっぱいに、細かな魔法の模様が浮かび上がった。


「う、わ……細い、細かい……!」


「かなり精緻で繊細な魔法ね。一体何が目的で、こんなものを……このあたりの魔法は《魔法隠し》かな? ものすごく念入りに隠されているみたい。魔女に対しては特に、念入りに隠すように設定されているから、あたしらにはわからなかったみたい」


 あまりにも複雑な模様が細い線でびっちりと像に施されている様子に、私はなんだか頭がくらくらとしてきてしまって目を閉じた。線から線を追いかけようとして、段々わけがわからなくなってきてしまったのだ。慣れた魔女なら絡められ重ねられて隠蔽された魔法の模様のひとつひとつを見出し、解すことができるのだけれど、私には荷が重すぎる。だれど、聞こえてくる声からすると、どうやら《魔法隠し》や《魔力隠し》、《吸い上げ》の魔法がいくつもいくつも重なり合って、このような模様の塊となっていたようだった。


「すみません、少しは協力できたらよかったんですが……」


「その分、そっちの男前の《ドール》が大手柄さ。ここに新しい発見なんてないって、みーんな思っていたからね。……さぁ、もうすぐ解せそうだ。目をお開け」


 目を開けてみると、像の上から呪文が立ち昇っているのが視える。これだけのものが重なっていたのだと思うと、なんだか空恐ろしかった。

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