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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
12章 クロスステッチの魔女の気まぐれ旅
233/1021

第233話 クロスステッチの魔女、気ままに採取する

「それじゃあ、今日もしゅっぱーつ」


「「はーい」」


 洗い物は《浄化》の魔法ですぐに済んでしまうから、出発するのは簡単だった。しばらくは箒に乗らず、周囲のものを採取しながら歩くことにした。


「私が見える範囲で何か気になるものがあったら、採取してきてね」


「はーい」


 ルイスとアワユキが今までも何度か頼んだように採取に行ったのを眺めて、私自身も採取にかかる。一晩枝を借りた木に生えていた苔に、青々とした葉、落ちた枝。側の川に流れていた綺麗な水は、飲み水としても採取物としても持っていく。川床に落ちていた綺麗な緑色の石、金色を含んだ白い石、透明な水晶の欠片。


「やっぱり、知らないところに行くと面白いものが落ちているわね……あ、これも知らない花かも」


 根から掘り起こした白い花を一輪、瓶に入れて魔法のリボンをかける。こういう時に採取したものを入れる入れ物は沢山用意してあったから、最初から色々と拾ってしまっていた。山を下りたら知らないものばかりで昔は不安だったけれど、今は知らないものに囲まれることを楽しいと思えるようになっている。


(昔はこんな風に考える日が来るだなんて、思ってなかったなあ)


 そんなことを考えながら、何種類かの知っている細い草を見つけて長い葉を千切る。そのうちの一つ、宿灯草と呼んでいた草の葉をいくつかの少し凝った結び目に結んで、さっきの木に戻って根元に置いた。一晩枝を借りたことへの礼の品だ。しばらくは木々を借りて眠るつもりでいるから、何個か作れるように採取しておく。


 のんびりと歩いていたら、ルイスとアワユキが戻ってきた。花をいくつか見つけたらしく、嬉しそうに私に見せてくれる。魔法はないが、蜜が取れておいしい躑躅の一種だった。


「あそこの草むらのところに、沢山咲いてたんです!」


「これは魔法には使えないけど、蜜が吸えておいしいのよ」


 花の沢山咲いている場所を教えてもらって、一人一輪ずつやり方を教えて吸った。もっともルイスは吸う力が弱くて、アワユキは頭を突っ込み過ぎて鼻先が花粉で汚れてしまったけれど。小さなナイフで切り開いて、ルイスにも蜜を取れるようにしてやった。ひと匙舐める程度の量だけれど、人間だった頃は貴重な甘味だったっけ。


「わぁ、甘いですね! こういう花もあるんですね」


「ちょっとだけね。これを沢山集めたりして作るのが蜂蜜なのよ」


 そんな話をしながら歩いていると、岩の多いところに来てしまった。地図を見てみると、危ない場所ではないらしい。転ぶのは嫌なので、箒で飛んで移動することにした。

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