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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
11章 クロスステッチの魔女とばらばらの《ドール》
229/1022

第229話 クロスステッチの魔女、また旅をする

「それじゃあ、お師匠様。今日はそろそろ、失礼しますね」


「また何か妙なものとか見つけたら、勝手に持って帰ったりしないであたしを呼ぶんだよ」


 ルイスも綺麗になったし、と帰ろうとしたところで言われた言葉に、うっとなる一幕はあったものの。眠り込んで起きなかったアワユキをカバンに入れて、ルイスを箒に乗せて、お師匠様の元を辞した。


「マスター、これからどうするんですか?」


「うーん……材料集めにふらふら旅をしてみようかなって。あ、その前に作ったものは組合に持っていくけれどね」


 目当てがあって探し物をするのではなくて、単純に面白い素材になるものがないかという旅。少し家を長めに空けて出かけるのを、お姉様やお師匠様は何度かやっているのを知っている。そろそろ、私だってそういうことをしてもいいだろう、と。


「時折町に立ち寄っては魔女としての力を貸す、という形で流れ歩いている固定の家を持たない魔女、という人もいるらしいの。そこまでのことは私にはできないけれど……四等級でそんなに派手な魔法も使えないしね。とにかくウロウロして、普段中々見ないような素材を集めてみたいの。今までも何度か出かけていたけど、そういうのよりももっと長くて、気まぐれの旅!」


「なんだかそういうの、絵本の魔女みたいで素敵です!」


 エホンってなんだろう、とは思うものの、なんだかルイスも楽しそうなので、私も楽しかった。アワユキも目が覚めたら、きっと楽しそうに賛同してくれるだろう。


「でもマスター、おうちを開けて大丈夫なんですか?」


「連絡用に水晶の片割れは置いていくし、そもそも私を訪ねてくる人たちは基本的に私の水晶の波も知ってるしね」


 だから困らないと思うの、と言うと、ルイスは納得したように頷いた。


 それからすぐに家で仕事をして、翌日には組合に作ったものを納めに行った。思い立ったら吉日という言葉の通り、すぐに日持ちのする魔法の食べ物を組合でそのまま買い込む。魔法の瓶に入れられた野菜や、干してある肉、普段とちょっと違うパンを出せる魔法の刺繍、それから見た目よりたっぷりの水を納めてくれる水袋。


「あら、クロスステッチの魔女ちゃん。遠出するの?」


「ちょっと私も、長い素材採りの旅に出てみようかと思いまして」


「それじゃあ地図がいるんじゃないかしら。四等級魔女用の魔法の地図があるわよ、警告機能付き」


 銀貨で買った魔法の地図には、時折動く赤い×がつけられている。布でできた地図は、恐らくは魔法の染料で染めた後に魔法のかかった筆で色々と描いたもののように思われた。


「魔女組合が定めた四等級魔女が近寄ってはいけないようなものに対して、赤い×で警告するようになっているの。だから、この赤い×のところには近寄っちゃだめよ」


「はい、ありがとうございます」


 私のお金で買える地図では赤い×がつけられているだけだけれど、もっと高価な地図ならどんな脅威が書いてあるかもわかるらしい。とはいえこれで十分だと、私は店員の魔女にお礼を言った。

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