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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
11章 クロスステッチの魔女とばらばらの《ドール》
224/1022

第224話 クロスステッチの魔女、小さな試験を受ける

「お師匠様、ルイスのパーツに吸わせた魔力はこんな感じでいいですか?」


「そうね……バラバラにしないとこういう細かいところの手入れができないから、意識して沐浴させるだけでなく、時々こうやってバラしてあげてね」


 薬液にあった燐光が少しずつ消えていき、薬草や魔石からルイスへの魔力が移っていく。アワユキも横で小さなお風呂に薬液を用意して浸っていて、こちらはうたた寝をしていた。アワユキはルイスのようにバラバラにできる構造をしてないから、ここは仕方ない。後で日向ぼっこをして革を乾かしてお日様の力を取り入れれば、あちらは大丈夫そうだ。


「魔法糸の縒り直しは、ルイスのように消耗しやすい子のためによく覚えておくこと。魔法糸を全部取り替えてもいいけど、その度に魔力をイチから魔法糸に流し直さないと体を動かせない。それは意識していなくても《ドール》の負担になるから、可能な限り前の魔法糸を使い直す方が本当はいいんだ。例外はなんだと思うか、考えて答えてみな。薬液から引き上げたパーツもひとつずつ、丁寧にお拭き」


「はいっ……ええと、ええと」


 ぐるぐると頭を回転させる。その間も、ルイスのパーツを薬液から引き上げて水分を取り除くのは止められない。《ドール》の薬液拭き取り専用の布という人間の頃は考えることさえできないような道楽の品を使いつつ、必死に今までの教えを思い返した。

 魔法糸。《ドール》の体を動かす、重要性の高いパーツ。《魔女の夜市》や工房などで簡単に手に入るのは、ある程度の経年劣化があるから。魔力のある素材を様々に紡いで作られる糸は伸縮も自在で、単体での魔力が強いから魔法の刺繍作りには向かない。魔法糸そのものに魔法を籠めることは糸紡ぎの一門なら可能だというけれど、使い所が限られすぎててあまりそういう糸はない。

 うんうん唸りながら考えてると、パーツを拭いていて気づいたことがあるので「あっ」と声を上げた。


「魔法糸そのものが大きな傷を受けたり、切れてしまった時ですか?」


「そうだね、半分正解。あともう一つあるよ」


「えぇと……糸そのものの傷は少ないけれど、魔法になってる部分に傷がついた時?」


「正解」


 魔法糸そのものに魔法を仕込むことは極めて稀とはいえ、ないわけではない。そういう時は魔法の暴発を避けるため、傷があったら早めに取り替えてやるべきなのだそうだ。ちなみに、私が今回縒り直す糸に魔法は仕込まれていない。ただ、ルイスに合わせて魔力をたっぷり含むようにはしてあるだけだ。材料も手持ちで足りたから、拭いた後にお日様でルイスを乾かしてる間にしっかり作るように、という話だった。


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