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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
11章 クロスステッチの魔女とばらばらの《ドール》
219/1021

第219話 クロスステッチの魔女、《天秤の魔女》に会う

「まず、《ドール》の不法投棄はちゃんと通報しないといけないのよね」


「それってまた、《裁きの魔女》様方ですか?」


「あれは重罪の時にだけ出てくる魔女達よ。もうちょっと軽い罪を担当する、《天秤の魔女》達に話すわ。ちょっとそこで、《ドール》達と待ってなさい」


 私はルイスとアワユキを手招きして抱き上げると、お師匠様がご自分の水晶で《天秤の魔女》達と話す姿を見ていた。


「……そう、《ドール》の不法投棄。弟子が見つけて、代わりに……隠ぺい工作の魔法の痕跡があるわ。誰の仕業だとしても、こんなことは……ええ、ええ。来てくれるの? じゃあ、この水晶を目印にお願い」


 話し終えたお師匠様が、水晶を草の上に置く。そうするとお師匠様が《虚ろ繋ぎの扉》で来たように、《虚ろ繋ぎの扉》が出来上がって魔女達がやってきた。光の糸がくるくると水晶の上に立ち上り、編まれていって、扉を作る。その向こうから白い指先が覗いて、扉が大きく開くと、魔女達が現れた。《裁きの魔女》達と違って顔は隠しておらず、白いローブの裾には大きな金色の天秤の刺繍がある。《天秤の魔女》達のシンボルは、《宝石と糸巻を載せた天秤》だ。

 ローブの中に入っているのは、短い茶髪と緑色の吊り目の魔女だった。少し睨まれたような顔に目をそらすと、主と同じローブを着た可愛らしい《ドール》と目が合って微笑まれた。同じ茶色の髪と緑色の目だけれど、目つきが柔らかい。二人とも白い三角帽子を被っていて、中は揃いの茶色いワンピースと茶色の革靴だった。


「《天秤の魔女》第五席、棒針編みの二等級魔女ガヘリア。《ドール》の不法投棄の件について、調べに参りました」


「あたしはリボン刺繍の二等級魔女アルミラ、この子は弟子のクロスステッチの四等級魔女。第一発見者は、この馬鹿弟子の《ドール》のルイス。ルイス、見つけた時はどうなってたんだい?」


「えと、魔法の布に隠されるみたいにして、あの頭が捨てられてました……あの、あの子は、助けてもらえるんでしょうか。首から下がなくて、可哀想です。せっかく、《ドール》として、生まれて来たのに」


 ルイスが縋るようにそう言うと、ガヘリアと名乗った魔女が「大丈夫ですよ」と言う。目つきが鋭くて怖い印象があったけれど、声はとても穏やかだった。


「捨てられた子は被害者で、捨てた魔女がこの場合は加害者です。新しい首から下を組んであげるか、探してあげないとですね。私たちに伝えてくれて、ありがとうございます」


「ルイス、とてもいい子に育ってくれてよかったわ。そうだ、ガヘリア様。もしその子の持ち主が見つからなかったら、私がその子を引き取ってもいいですか? ルイスも、その方が安心すると思うんです」


 お師匠様が呆れた顔をしたけれど、私はいい考えだと思って提案してしまった。ガヘリア様は「こういう時の元の持ち主って、基本的に表れないんですよねぇ」と言って、「いいですよ」と言ってくれた。

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