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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
10章 クロスステッチの魔女、夏
216/1022

第216話 クロスステッチの魔女、採取を始める

「今日はいい天気ねー! ちょっと高いところまで飛ぶと、暑いけど」


「マスター、植物がみんな元気そうな緑色をしていますよ。これはきっと、沢山いいものが採れそうですね!」


「みんなすくすく育ってるのー!」


 次の日。私は少し遠出して、普段あまり行かない東の森に足を延ばし……箒を飛ばしていた。採取の依頼もあったし、私自身、何か素敵な……いい材料になるものがないかと思って、気が向くままに箒を飛ばしていたのだ。空の高いところに上がると、太陽が近いからか流石に魔女の身体でも暑く感じる。

 適当な広けた場所で箒から降りてみると、夏草の青くて濃い匂いがたっぷりと私たちを歓迎してくれた。私は懐に入れていた石の感触も確かめる。今日は、革を採るために魔兎を狙いたいという話はルイスにもしていた。


「こんなに沢山のおいしそうな草もあるから、きっと魔兎も沢山いるでしょうね」


「革を必要な分だけ狩ったら、お肉は焼いて食べましょうか。おいしいわよ」


「アワユキも食べるー!」


 そんな話をしながら、いくつかの魔力を宿した草を刈り取ってカバンに入れる。これは探しているものではないけれど、魔力もあるし、何より素敵な緑色に染められそうなのだ。草木で染めるのも楽しいから、これで染めた布や糸で魔法を作ってもいい。


「マスター、マスター、僕とアワユキも探しに行っていいですか?」


「いいわよ。でも、気を付けてね? この辺りの草は背が高いから、埋もれてしまわないようにね」


 私がそう言うと、いい子の私の《ドール》達はしっかりお返事をして出かけて行った。アワユキの爪は石でできているし、ルイスにはスコップや鋏を渡してある。だから、ある程度なら二人でも採取が可能だった。はぐれてしまわないようにだけ気を付ければ、二人がやりたがることは私としてはやらせてあげたかった。他の《ドール》達でも、採取や魔物退治を手伝っている子は多いらしい。


「私の方は、いいものあるかな~……」


 そんな風に思いながら、うろうろと周囲を探索する。ここは、少し妙な場所だった。変わったものがほとんどない木と草だけの場所なのに、やけに魔力を感じるのだ。自然物に魔力が宿っているにしては、少し違和感がある。うまく説明はできないけれど……何か、少し不思議だった。


「マスター、マスター!」


 突然、目の前に中々の早さでルイスがすっ飛んできた。少し考え事をしつつ歩いていたのを中断され、面食らった私は「どうしたの?」と慌てた様子のルイスに聞く。


「マスター、あの子を助けてあげください!」


 そう言って、ルイスは私の腕を引っ張り始めた。

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