表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
10章 クロスステッチの魔女、夏
211/1022

第211話 クロスステッチの魔女、《ドール》の店も見に行く

「……この辺りの店は、妙なものばかり売ってる」


 《魔女の夜市》のとある一角に差し掛かったとき、"三番目の雛"は怪訝そうな顔でそう言った。そうかな?と思って周りを見回してみて、気づく。この辺りは《ドール》のパーツを売る小さな店が並んでいるから、色硝子の目玉だの、手首から先だの、爪だの、足だの、首のない胴体だの、髪の毛だのが置いてある。もちろん、すべて《ドール》の物だ。お師匠様の工房とかで私は見慣れているし、ルイスも気にしている様子はなかった。"早く飛ぶ翼"も、こういう場所のことは知っているのだろう。驚いた様子はない。


「マスター、あれらは壊れてしまったものを変えるためにあるんですか?」


「勿論それも大事だけれど、それだけじゃないわ。色や気分によって、変えたがる魔女もいるのよ」


 私は今のルイスを気に入ってるから、こういった場所は軽く見るだけのつもりだった。でも、じっくり見てみるとこれはこれで面白い。


「なになに……? 《精霊鎧装》シリーズ、新作です。精霊石の粉を練り込んで焼くことで、ヒトガタから外れた美を貴女の《ドール》に。へぇ~」


 店によって、やはり特色はいくつかあるようだった。例えば今足を止めてる店では、《ドール》に鹿のような足をつけたり、狼のような爪の手をつけることができるらしい。普段は単なる飾り程度のものだけれど、魔力を込めてやれば見た目相応の物になる、らしい。使わないなら、そもそも普通の手足にしておいて、必要な時だけ組み替えてもいいのだろう。体を組み直せるのは《ドール》達の売りのひとつだし、彼らがその際に痛みを感じることもない。


「どうだい? 獣や精霊の力を借りて、あんたの《ドール》をもっと魅力的で強い子にしてやれるよ」


「気にはなるけど、他も見たいの。だからこれだけもらっていくわ」


 《名刺》として店主の魔女から小さな頭飾りを受け取る。白い羊の耳の形をしていて、ルイスの銀色の髪に似合いそうだった。


「精霊と獣の力を借りることは私達もやるけれど、こんな形ではない」


「私も初めて見たかも」


 ルイスに羊の耳をつけてやると、やっぱりかわいかった。魔力を込めていないから、今はただの飾りだ。


「《名刺》とはいえ多少は魔法でなければ、魔女の名折れだからね。魔力を込めると、少し今より耳が良くなるよ。もっと耳のよくなる魔法が欲しかったら、その時はうちで買い物をしていって頂戴」


 わかりました、と言って露店を見回してみると、まだまだ楽しめる場所が沢山ありそうだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ