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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
10章 クロスステッチの魔女、夏
207/1021

第207話 クロスステッチの魔女、着せ替えを楽しむ

「ルイスには何が似合うかしら! すみません、連れてきた《ドール》に試着させるのは可能ですか?」


店員の魔女は、私がカバンから出したルイスの姿を見て「いいわよ」と頷いてくれた。ルイスに何を着せるか、わくわくが止まらない。何人かの《ドール》服売りの魔女が集まって、皆でひとつの大きめの店を作っている一角だった。《魔女の夜市》に《ドール》の服を作って売りに来た魔女達は、そのサイズごとに場所を割り振られる。私がルイスを連れてきたのはもちろん、少年型のための服が集まっている場所だった。


「どれもこれも、小さい……」


「この子達が着るための服だからね」


私はそう言いながら、ルイスに似合いそうな服を何着か探してみる。銀色の髪に赤い瞳、白い肌に相応しい服を。《ドール》の髪と目の色は簡単に変えられるとはいえ、私は今の色合いを気に入っているのだ。

 最初に私の目を惹いたのは、黒の燕尾服を始めとした、改まった場所に相応しい礼装。もちろん相応の靴や帽子、白手袋に小さな杖まで揃ったものだ。こんなものが必要になる場所に行く予定もないのに、ついルイスに着せたくなってしまう。


「ルイス、これ似合いそう! 着ていく宛はないけど……」


「そうなんですか?」


私がルイスに小さな白いブラウスを着せていると、「うわ、何あれ」という誰かの小さな声が喧騒の中でもはっきりと聞こえた。何のことだろう、と思いかけたところで、そういえばルイスのお腹には前の持ち主のつけたタトゥーシールがあったことを思い出した。普段は気にしていないから、忘れていた。

 きゅ、と小さなルイスの手が私の服を掴む。聞こえてしまって、自分の事だと思ってしまったのだろうか。気にしないでと言う代わりにぽんぽんと頭を撫でてやって、残りの服を着せる。


「やっぱり銀色の髪に黒、最高だわ」


「似合うと思う」


 "三番目の雛"にも頷かれて嬉しくなったけれど、すべて合わせると強力な《守護》魔法が発動できる代わりに値段はかなり高価なものだった。間違っても、ぽんと買っていいものでない。魔法のかかってないものもあるけれど、礼装に相応しい素材を使っているからか元々高かった。


「お嬢さん、四等級かい。似合う服を着せられて嬉しいのはわかるけど、まだ早いんじゃないかい?」


「あはは、そうですね……三等級になったら買わせてください」


 私はそう言って、今度は他の服を見る。いつも着ている空飛ぶジャケットに似合いそうなスカーフなんかも、見てみると楽しいものだった。

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