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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
10章 クロスステッチの魔女、夏
201/1021

第201話 クロスステッチの魔女、夜市を楽しむ

 明るいだけでなく、色とりどりな魔法の灯り。時折、幻影のような蝶が飛んでは私や他の店にぶつかって消えて行く。大小様々な露店に並んでいるのは、魔法の素材、魔法そのもの、《ドール》関係の品に飲み物や食べ物もあった。そういえば去年は《ドール》を買うのに意識がいっぱいで、飲み物や食べ物まで気が回らなかった気がする。入り口で飲み物が買えるのは、暑くなっても来たしいいことだと思った。


「これは何ですか?」


「甘いツルコケモモを絞ったジュースだよ! 銅貨2枚でどうだい?」


 ありがたく買って、甘酸っぱい味を楽しんだ。魔女の砂糖菓子が入っているから、少し魔力にも効く。木製の杯には魔法の彫り物が施されていて、恐らくふたつの魔法が絡み合っている……多分、これは《保冷》と《保持》の魔法だ。少し砕いた氷の混ざっている、冷たい飲み物を冷たいままに。そして、傾けても溢れないようにされているんだと思う。


「私ももらうわ、ついでに細かくして頂戴」


 グレイシアお姉様は銀貨で払って、沢山の銅貨をもらっていた。お姉様くらいになると、あんまり銅貨は持ち歩かないのだろう。私は細かい買い物のおつりで銅貨の持ち合わせがあったからそれで払ったけれど、持ってない魔女というのもカッコいいと思ってしまう。同じようにジュースを買う他の魔女に軽く目線をやると、同じように銀貨を両替するのも兼ねて買っていく魔女が何人かいるようだった。


「お姉様、ここでお金を細かくする魔女達が多いんですね。去年はルイス達買うので頭がいっぱいで、素通りしちゃったんです」


「ここは両替も兼ねていて、大きいお金しかない魔女はここで一枚くらい崩していくのよ。そのつもりで、彼女達もおつりを多めに用意しているしね」


 《魔女の夜市》は長年開催され続けているから、こういうところもお互いにうまくやっていけるよう工夫がされているらしい。飲み物を手に、夜市の中を歩き回る。心掛けの悪い魔女に取られてしまわないよう、《ドール》達は鞄の中から顔を出す姿勢だ。


「グレイシアお姉様は、今回はお目当てがあるんですか?」


「んー、今回は特にはないかな。色々見てるだけでも楽しいし、使い勝手の良さそうな気の向いたものを買えたら、それでいいなって」


 二人であれこれと見ていると、何に使うかわからないものも沢山あった。艶やかな鳥の羽、砂の塊のような宝石、何かわからない干した植物の瓶詰め、束ねられた魔法の紐……。

 そんな風にあれこれ見ていると、魔女ばかりの夜市の中で奇妙な人影を見つけた。

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