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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
10章 クロスステッチの魔女、夏
199/1023

第199話 クロスステッチの魔女、楽しいお買い物の計画を練る

 楽しいことは、お買い物の計画を練ること。アワユキは体のパーツを組み替えられるように作っていないから、布やリボンを買ってケープや爪飾り、角飾りなんかを作ってみてもいいかもしれない。ルイスの方は色々と正規のものではない子だけれど、元々《ドール》というものは髪や目を簡単に組み替えることができる仕組みになっている子達だ。あんまり頻繁に変えると《ドール》の心によくないらしいけれど、時折変える分には問題ないらしい。


「グレイシアお姉様、お姉様は好きなお店とかあるんですか?」


「そうね、いつも色々なお店が来ているから……お気に入りをそんなに作らないで、その時その時で気の向くままに歩き回るのが好きなのよ」


「それって私がルイスを見つけたのとどう違うんです……?」


 ルイスを見つけたのだって、気の向くままに(迷子半分で)歩き回った結果だった。だというのに、「あなたのそれは考えなしって言うのよ」と言われてしまう。


「初めての《魔女の夜市》で、あなた、どこに行ってたの?」


「えーっと、ルイスを買ったお店は大きい通りとは別にありました。でもルイスを買った後は、歯車細工の魔女ちゃんから《名刺》代わりに片目をもらって、その後は大通りの《ドール》用家具とかを見てました」


「僕のベッドとお布団と食器は、マスターがこの時買ってくれたものなんですよね」


 ルイスが横からそう話す。私がルイスに買ってあげたのはベッドとお布団、枕、食器一式。冬用の暖かい布団はあの時買わなかったけれど、夏用の薄手のものはあの時買っていた。


「あの時はずっと頭がぼんやりしていたから、僕、色々見てみたいです!」


「そうね、名前もつけてなかったもの。今にして思えば、すぐに名前をつけておいて一緒に見て回ればよかった」


 当時は初めての《ドール》を起こすのを、特別な儀式として自分の家でやりたかったしそうした。名前をつけていない《ドール》は意識が朧げなままで、自分の好みなんてわからない。名前がなければ、自分が誰かだなんてわからないのだ。これは私たち魔女も同じで、だから等級の低い未熟な魔女は自分の名を伏せる。自分の中で大切にその名を抱えておかないと、人前に晒してその名前に危害を加えられたりした日には抗えないからだ。


(多分、あの《裁縫鋏》達が心を汚染すると言われている理由って、ここなのかもしれないわね)


 そんなことを思いながらも、耳はグレイシアお姉様の話を聞いている。手はメモを取っている。《ドール》のことに詳しいグレイシアお姉様の話はとても参考になって、夜市の日がさらに待ち遠しくなった。

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