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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
10章 クロスステッチの魔女、夏
198/1024

第198話 クロスステッチの魔女、《魔女の夜市》の招待を受ける

 結局、イヴェットがグレイシアお姉様に連れられて帰ってから、私は数か月引きこもっていた。なんだかんだと言って魔法の素材や食料品をお姉様が持ってきたこともあり、快適な籠り生活だったと思う。養ってもらっているような状況に対して、罪悪感はかなりあったけれど。


「グレイシアお姉様、《魔女の夜市》に行ってもいいですか?」


 ルイスを買ったあの夜市。気づけば一年が経とうとしていて、もう一度あの夜市の知らせが届く時期になっていた。開催時期と場所を告げる《知らせ鳥》によると、次の満月の夜に前回と同じ場所でやるのだという。


「うーん、まあ、いいわよ。例の《裁縫鋏》が捕まったという話は聞こえてこないのが気になるけれど、行きたいんでしょう?」


「ルイスに新しい服も買ってあげたいなって」


 作った魔法を確認してもらっていた時にそう話を振ると、少し考えた後で許可を出してくれた。一緒に来るのだという。


「だってあなた、ルイスを買った時だって正規に許可を得ている魔女の店ではなくて、小さな怪しい店に入ってしまったんでしょう? そんなところ、四等級魔女が行ってもぼったくられるだけよ」


「その怪しい店で買ってもらった身であれですけれど、マスターはもうちょっと警戒心を持つべきだと思います」


 ルイスにさらっと後ろから撃たれてしまった。その理論で言うと、一度元の持ち主が手放した《ドール》が新たな主と出会って幸せになれる確率があまりにも下がるし、ルイス自身も私に買われないことになると思うんだけど……。


「アワユキもお出かけついてくー!」


「そうね、アワユキがつけられるかわいいリボンとかもあるかもしれないわね」


 腕に絡みついてきたアワユキを撫でてやりながら、私は自分の持っているお金や、交換に使えるかもしれない魔法や素材のことを考えた。しばらくは自分で作った魔法のパンを食べることになるけれど、結構色々買えるかもしれない。


「でも正直、私が買わなかったらルイスはまだあのお店に転がっていたと思うのよ。私は片方の目を新しく買って入れたり、色々と手を加えるのは楽しかったけれどね」


「クロスステッチの魔女、あなたやっぱりうちの子よ。魔法と《ドール》に関わることが大好きで、《ドール》に手を加えて自分好みにするのも好きなんじゃない」


「……好き!」


 確かに好きだった。楽しかったのだ。言われてみたら、これってとても《ドール》の修復だのなんだのをやっているお師匠様やグレイシアお姉様の系譜だ。


「じゃあ、そういうものも見に行ってみるといいわよ」


「そうします!」


 そうと決まれば、夜市の日が待ち遠しかった。

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