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クロスステッチの魔女と中古ドールのお話  作者: 雨海月子
9章 クロスステッチの魔女と魔女の掟
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第184話 クロスステッチの魔女、昼から働く

 結局、昼まで眠ってしまった。もう一度目を開けると、昼のところまで陽射しが差し込んでいる。私の上にはアワユキが乗っていて、「主様ー」と声を上げてはつんつんと鼻で私の頬をつついていた。


「寝すぎちゃったみたいね……」


「主様、お寝坊さん! 兄様も!」


「おはようございます、アワユキ……」


 アワユキを撫でてやりながら起き上がると、元の箱の中で丸くなったまま目を開けていたイヴェットと目が合った。いつの間にか静かに起きていて、そのままじっとしていたようだ。


「イヴェット? おはよう」


「おはようございます、皆様」


 私の隣で丸くなっていたルイスが、むにゃむにゃと目をこすりながら起き上がる。思いっきり窓を開けて、明るい朝の……ではなく、昼の光を家の中に取り入れる。


「さ、お昼ご飯にしよっか!」


 簡単にパンにバターを塗っただけのお昼をする私の横で、砂糖菓子を食べる《ドール》達の様子を見守る。それが終わって片づけをしたら、私は今日必要なことを考えた。昨日、大体は資材の整理をした。布だの、種だの、石だの、草だの、そして何なのかさっぱりわからない謎の種だのを、いったん大雑把に分類した。イヴェットはその間、しっかり力仕事を手伝ってくれているし、少しなら字が読めるらしい様子も見て取れた。


(次に様子を見ておいた方が喜ばれるのって、多分、裁縫仕事かな?)


 そんなことを考えながら、機織り……をするには昼間で眠りこけてしまって時間がないので、糸紡ぎをすることにした。機織りは時々するけれど、準備も作業も大変だから、やるとしたら朝から一日仕事だ。昼からなんて、興が乗ってきたあたりで終わらざるを得なくなってしまうのだから。


「今日は糸をとにかく長く沢山紡ごうと思うから、三人とも手伝って頂戴」


 イヴェットとルイスに、資材としてため込んでいた魔綿の袋を持ってきてもらう。この時ルイスには、なるべくイヴェットが判断できるか見守ってほしいと耳打ちしておいた。結果、ちゃんとした袋を二人が持ってきてくれる。大き目の綿が入った、小型の《ドール》が持つには少し大きい袋だ。よろよろしたりもせず、案外ちゃんと持ってきてくれている。イヴェットは少し浮いていたけれど、よく見るとルイスの服の裾を掴んで引っ張ってもらっていた。何それ可愛すぎない?


「あらあら、随分とかわいい荷車さんだこと」


「僕が提案したんです。イヴェットは浮いてられるだけだから、僕が引っ張ればきっとうまくできますよって」


 ルイスが誇らしげな顔をして、後ろのイヴェットは何に対してかわからないか頷いていた。かわいい。

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